中国製「検査キット」の正確率は5%

長谷川 良

インド当局は中国武漢発の新型コロナウイルスの感染状況を迅速にスクリーニングする検査キットを中国企業から輸入したが、なんとその精度が5%に過ぎなかったため、返品したという。海外中国メディア「大紀元」日本語版が3日、報道した。

▲中国軍が設立支援したミャンマー軍の新型コロナ検査実験室が稼働(中国国営新華社公式サイトから 2020年5月6日)

▲中国軍が設立支援したミャンマー軍の新型コロナ検査実験室が稼働(中国国営新華社公式サイトから 2020年5月6日)

大紀元によると、インド医学研究評議会(ICMR)がウイルス検査の促進のために、ウイルス抗体を一緒に検出できると宣伝していた中国の2企業、廣州万孚生物技術(Guangzhou Wondfo Biotech)と珠海麗珠試剤有限公司(Zhuhai Livzon Diagnostics Inc)から検査キット約50万個を輸入した。企業側の説明では、「感染している可能性のある人の血液中の抗体を30分で検出できる」という。そこでインド側は陽性と診断された患者に検査キットを使用したところ、ほとんどは陰性と判断された。正確率はわずかに5%に過ぎなかったのだ。

駐インド中国大使館は「中国製品に対して偏見がある」とインド側の批判に反論している。インド側の苦情は過剰反応の可能性も排除できないが、それにしても「正確率5%」の検査キットを外国に輸出許可した中国当局側のいい加減な輸出管理には驚く。もちろん、インドが粗悪な中国製の最初の犠牲国ではない。大紀元によれば、スペイン、カナダ、オランダ、フィンランド、チェコ、オーストラリア、スロバキア、トルコ、イギリス、米ジョージア州、イリノイ州、ミズーリ州でも同様の中国製の不良医療用品を掴まされている。

中国武漢発の新型コロナは現在、世界350万人以上を感染させ、約25万人が犠牲となっている。感染拡大に対応する欧米諸国では医療用マスク、防御服、人工呼吸器などの不足が深刻だ。大多数の医療器材は労賃の安い中国で生産されているからだ(世界のマスク生産の85%は中国)。そこで、新型コロナの発生地の中国からマスクや防御服を購入せざるを得ないが、その中国製医療品の品質は通常では考えられないほど粗悪だ。世界は、中国発新型コロナに苦しめられたうえ、それに対処するために購入した中国製医療用品の品質の悪さに頭を痛めているわけだ。これをボクサー用語では「ダブルパンチを浴びた」と表現する。

中国共産党政権は新型コロナの発生を意図的に隠ぺいしてきた疑いがもたれ、信頼を失ってきた。そこで信頼回復のために通称“マスク外交”を展開してきたが、肝心の中国製マスク、検査キットなどに不良品が多くて、世界から苦情が飛び出しているわけだ。

海外中国メディア「大紀元」によると、オランダ政府は3月28日、中国から購入した60万枚のマスクの回収を発表した。顔に密着しないうえ、フィルターが機能していないという。フィンランドでも中国から購入したマスクと個人用防護具が基準を満たしていないと発表。同国は、中国から200万枚の外科手術用マスクと23万個の個人用防護具を購入した。スペイン政府は中国製のウイルス検査キットを550万個購入したが、精度が30%を下回ったため、返品せざるを得なくなった。パキスタンにいたっては、高品質のN95マスクを注文したが、送られてきたのは下着で作られたマスクだったということで、「中国に騙された」と怒りの声が出ている。

医療器材、用品は生命を扱う医療の現場では必需品だから、例えば、医療用マスクが不良品の場合、医師たちが患者から感染する危険性は高まる。実際、新型コロナ発生以来、数百人の医師たちが治療の際、感染して命を失っている。

そしてマスク以上に品質が求められる検査キットで中国製検査キットの正確率が5%というのだ。中国共産党政権は「武漢市の感染は終息した」と宣言し、都市封鎖(ロックダウン)から76日後、封鎖解除を実施した。中国の検査キットの結果、陽性患者が陰性となったことが証明されれば、自由に移動が可能となったばかりだ。(定期的検査は必要とされる)

問題は、陰性か陽性かを調べる検査キットが不良品の場合に、どのようなシナリオが展開されるかを考えてほしい。陰性と判断された多数の感染者が中国全土に出歩くばかりか、健康になったので世界旅行でも、ということで海外に出かける。そうなれば、遅かれ早かれ感染の第2波どころか、第3波、第4波が出てくる確率は高いと予想できるわけだ。

遺伝子増幅法(PCR法)によるSARS-CoV-2の検出では、 鼻咽頭拭い液などの試料からRNAを抽出して精製する。短期間で新型コロナウイルスの有無を測定する抗原検査もあるが、検査キットの品質には良し悪しがあるのが現実だ。

米食品医薬品局(FDA)は4日、新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査キットについて、規格を厳格化すると発表したばかりだ。信頼性の低い中国製検査キットが出回っていることへの対策と受け取られている。

ところで、国際人権団体関係者は「新型コロナに感染していない反体制派活動家が正確率5%の検査キットで陽性と判断され、隔離されるケースが出てくる」と警告する。すなわち、中国共産党政権は品質不良の検査キットを反体制派活動家の拘束用武器に利用できるというのだ。欧米メディアから人権弾圧という批判を受ける心配はないからだ。

不良品のマスクを新型コロナの感染に苦悩する世界に大量に輸出して儲ける一方、正確率5%の検査キットで国内の反体制派活動家を取り締まる中国共産党政権は一筋縄ではいかない一党独裁国家だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。