国際的出口戦略のためにも検査拡大を

松川 るい

官邸サイトより

5月4日に、安倍総理は、緊急事態を5月31日まで延長することを発表した。併せて、延長に伴い追加対策を講じることも明言。家賃負担の軽減や雇用調整助成金の拡充や学生の支援を念頭においている。緊急事態は延長されるが、31日までの期間は、「出口」に向けた準備期間であり、コロナとの戦いは長期戦になることを前提に、「新しい生活様式」を作って行ってもらいたいとの要請がなされた。

また、一足先に感染を抑え込んだ(としている)中国や韓国だけでなく、ドイツやイタリアや米国や英国など各国も、ロックダウンを徐々に解除して緊急事態を少しずつ解除し、経済再開にシフトし始めている。感染を上手く抑え込んだベトナムやシンガポール、豪州やNZ、台湾などもある。

この先には、コロナをきちんと管理可能な状況においている(アンダーコントロール)している国の間で、しかも、様々な考慮から「選択的に」、徐々に人の往来も可能な形に解除がされていくことが予想される。いわゆる「収束国リーグ」みたいなものが形成されていくのだろう。

もっとも、完全な収束は各国とも難しいので、実際は「感染をコントロールできている比較的安全な国」みたいなイメージかもしれない。そして、それは、中国を中心とするグループや米国を中心とするグループ、そして、その両方に属さないグループみたいなに複数できていくことになるかもしれない。そうしたグループの間では、ビジネスや観光での人の往来などが徐々に「正常化」(といってもコロナ時代の新たなニューノーマルになるのだろうが)されていく。 

いずれにせよ、日本が経済再開の出口に向かっていく上で、感染をきちんと管理できており安全な「収束国」のカテゴリーに入る資格があると国際的に認知されることは極めて重要である。 

日本は、諸外国のような爆発的な感染拡大には至っていない。対人口比での死亡者数は極めて低い。イタリア並みの死亡率なら、日本では5万人亡くなっていることになるが、現在の日本の死亡者数は577名である(その理由については、別途「論座」で書いた「コロナとの戦い:パスカルの賭け」をご参照頂きたい。)。実行再生産数も1を切っている。

しかし、PCRはじめ検査数が少ないために、感染状況の把握ができていないと国際的には見られている。

他国で広がっているドライブスルー方式のPCR検査(サウスダコタ州公式flickr

47日に緊急事態を宣言したときから、日本の対コロナ戦略は新たなフェーズに入っている。それまではPCR検査について医療へのプレッシャーを考えてかなり抑制的だったが、もはやそうであってはならないし、政府も方針転換をしている。 

PCR検査の拡大は、既に市中感染が主となってしまった以上、治療のために何より必要なことである。違和感を感じた人がすぐに検査を受けられ、そして重症化する前に治療(アビガン投与など)を受けられるようにすることは、本人にとって何より重要であるが、医療崩壊を防ぐ意味でも、さらには、社会全体での経済再開に繋げていく上でも重要である。

また、上記「論座」投稿でも記載したが、現在流行っている欧州型ウィルスが悪質化している可能性もゼロではないので(死亡者数の増え方は1、2月より多い)、一層早期発見早期治療が必要であり、また、経済再開を探るとしても、やはり各人の感染防止対策とソーシャルディスタンシングは維持しなければ危険だ。気を緩めてはいけない。それが前提となった「新たな生活様式」や社会の在り方がニューノーマルになるのだろう。 

そして、さらにここで強調したいのは、検査拡大により感染状況とその収束状況を数字で示すことができるようにすることは、上記の「収束国リーグ」に入って、国際的な活動再開において除外されないようにする上でも重要だということである。

むしろ、強制的なロックダウンもせずに対人口比死亡者数を低く抑えて経済再開に進むことができれば(それは十分可能)、日本こそ、「収束国グループ」を引っ張っていく存在となることもあり得よう。そのためにも、PCR検査でなくとも抗体検査でもその他の検査でも良いが、感染状況やその収束状況や医療キャパ内でコントロール可能であることが何等かの客観的数字で対外的に示すことができることは極めて重要である。

flickr(Global Panorama、Gage Skidmore)

コロナという第三次世界大戦にも比される危機は、現実をより一層赤裸々に炙り出している。米中の覇権争いは一層激しくなるだろう。中国という国のリスクも世界に認識されると同時に、米国がコロナとの戦いで中国以上のダメージを被り、世界のリーダーとしてフルに活動するのも時間がかかりそうな様相である。その中で、日本の国益を何としても守っていくためには、日本が生存しやすい空間をできるだけ広げていくことが重要である。

サプライチェーンの国内回帰と多様化、マスクのような低付加価値だがコロナ時代の必需品となるような商品の国産化や食料自給率を上げること、マイナンバーカードの諸外国並み利用を可能とすることを始めデジタル化経済に対応できる体制に変革することなど様々な取り組みが必要である。こうした国内的取組みに加え、国際空間についてもそろそろ目を向けるべきだ。


編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏(自由民主党、大阪選挙区)の公式ブログ 2020年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。