今週のメルマガ前半部の紹介です。コロナウイルスの感染拡大に伴う混乱が続いています。先月にはとうとう緊急事態宣言が出され、5月4日には月末までの延長も宣言されました。
そんな中、地方で感染者(あるいはそう噂された人)に対する嫌がらせが発生しているとのこと。
【参考リンク】感染者の家に投石や落書き 首長ら「差別許されない」(朝日新聞)
【参考リンク】あおり運転に投石、暴言も…「県外ナンバー」無差別攻撃の恐るべき加害者心理(Asagei.Biz)
これを聞いて驚いた人は多かったんじゃないでしょうか。21世紀の今でもそんな村八分みたいなことする奴がいるのかと。映画『楢山節考』に村の作物を盗んだために夜なかに追い込みかけられる一家が出てくるんですが、まさにアレとやってることは同じですね。
いい機会なので、今回はこの“村八分”についてまとめておきましょう。これ、実は日本企業の人事制度とも深い関連があったりします。
日本が世界に誇る伝統、“村八分”
なんてことを言うと「村八分なんて三重とか徳島だけの話だろう」と思う人もいるはず。でも実際は都市部でも同様のことは発生しています。
【参考リンク】集団感染の京産大に非難相次ぐ 脅迫めいた内容も 新型コロナ(NHK)
そうそう、ちょっと前にイラクで人質になった日本人に対する自己責任論が盛り上がりましたが、あれなんかも根っこは同じですね。
筆者の周囲にも、東京生まれ東京育ちで農村どころか土の上を走ったことも無いような人生を送ってきたにもかかわらず「マトモに仕事もしないでふらふら外国行って捕まったんだから自己責任だ!」と拳を握り締めて熱く熱く語っている人間が何人もいた記憶があります。
どうも日本人には「我々には共同体のメンバーとして果たすべき義務があり、それが出来てない奴はけしからん」という強固な信念のようなものが広く共有されているように思えますね。
ところで、「日本人の労働生産性は先進国中最下位」という調査結果が出て一瞬だけ盛り上がるけどすぐに忘れられるというのはもはや恒例行事になった感がありますが、同じような国際比較ネタに「日本人は世界一弱者に冷たい」というものがあります。
【参考リンク】東大祝辞の核心「日本は世界一冷たい国」(プレジデントオンライン)
ちなみに上記リンク中に引用されている調査結果では「国が貧しい人たちの面倒を見るべきか?」という問いに対して肯定的に回答した日本人の割合は、調査対象47か国中最低の割合です。
筆者はこの根っこにあるのもやはり“村八分”と同じものだと考えています。働けない理由が何であれ、共同体の一員としての義務を果たしていないのだから、助けてやる必要などない、自己責任だと。それは優しいとか冷たいといった心の問題ではなく、日本人にとって社会とは単にそういうものなんでしょう。
ネット上で自粛指示に従わなかった感染者の特定に血道をあげている人たちを見るに、ネット空間の中でも日本人のムラ意識は変わらず健在なように見えますね。
以降、
村八分の精神こそ日本型雇用の真髄
企業ムラの黄昏
Q:「業務の切り分けを浸透させる方法は?」
→A:「当面は目に見える形でメリットを見せていくしかないでしょう」
Q:「企業を挟んだ社会保障制度ってメチャクチャ不公平ですよね?」
→A:「こんな時だからこそそれを実感しますね」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2020年5月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。