ビジネスの基礎、マーケティングの4Pの私見

岡本 裕明

私の所属するビジネス系NPOで今期の私塾の本コースが始まりました。今期のテーマはビジネステクニックで、まずはマーケティング基礎からスタートします。一概にマーケティングといっても皆さん、どこまでこたえられるでしょうか?案外ウェブやSNSだと思っていませんか?では、セールスとの違いは、と言われると答えに詰まると思います。

studiographic/写真AC(編集部引用)

モノやサービスを売るための方策を考えるのがマーケティングです。その大きな枠組みの中にセールスが入り込んでいると思っていただいてよいと思います。一般的にはセールスとは人を介在した販売活動や営業と考えられていますが、個人的にはオンラインセールスなどネット販売が普通になってきた今日、これらもセールスの一環と考えています。(学術的に違ったらごめんなさい。)SNSやウェブサイトは売り手と買い手のコミュニケーション手段と考えれば私はセールスの一部とみています。

ではマーケティングとは何かですが、一言でいえば何を誰にどんなふうに売るかを考えることです。例えば自動車会社が新しいクルマを開発するとき、どんな人向けにいくらぐらいの価格帯で会社としてどういう位置づけで売るのか、といった根幹の部分を言います。これはあらゆる商品開発に共通するもので食品やアパレルの商品開発から飲食店の新規開店やそれこそ新メニューだって一種のマーケティングです。

それを学問的にいうとマーケティングの3C、4Pというのが基本中の基本ともいわれます。3CとはCustomer, Company, Competitor で、4PがProduct, Price, Place, Promotionであります。上述のSNSやウェブはプロモーションの部分にあたるのですが、最近の傾向はこのプロモこそすべてという傾向も無きにしも非ずです。

私のビジネス上の経験からすると4P理論は位置づけがおかしいと思っているのです。個人的見解としてはProductが他の3Pを支配すると考えています。つまり、Productの良し悪しがそのマーケティングの過半を占めると考えています。

ある実例ですが、新規開店の店が大々的にプロモした結果、大行列になりました。客を待たせるというのは戦略的意図もありますが、概ね失敗です。事実、新規開店ではその商品が好きになる人は全体の一部でほかの人にはネガティブイメージすら植え付けることになったのです。

特にレストランの新規開店でこれをやると開店当初から「好き嫌い」が明白に出てしまい、客を端から絞り込んでしまうことになります。日本の雑誌やテレビに紹介された新規開店が長続きしないのは記事を見て行くと大行列で長く待った末に「なーんだ、この程度か」などネガが出てしまうのに店側は「大繁盛です」というギャップが生まれてしまうからです。

言い換えると製品やサービスが市場のニーズに合うかどうかわかりもしないのにプロモだけ先行しているケースが往々にして見受けられるということです。

もう一つの間違いは価格戦略です。正しい価格をつけるというのは実に難しいことです。例えば純粋に1000円の価値があるものを800円で売れば顧客からすれば200円得したと思います。しかし、見方を変えれば売主は200円損したともいえます。

ところが日本では安く売らんがなが先行し、Productのスペックを落としたり、アウトレット商品のように品質を少し甘くしたりすることがあります。Productに一定の希少価値があれば価格を買主が吊り上げることは株式投資をしている人ならお分かりいただけると思います。にもかかわらず、売り上げ至上主義をいまだに信じている経営者も多いのです。

大企業がマーケットシェア争いをするならともかく多くの会社はそんな大それたことは考えていないと思います。その場合、自分のビジネスのエリアから半径〇キロメートルといった仮想商圏を描き、そこでブルーオーシャンのビジネスをすることに精力を傾けるべきだと思います。つまりその店にしかないものを売るのです。

当地でもコロナで外食できないので私も持ち帰りの寿司を時々購入しています。その際の私の決定因子はうまいか、たらふく食えるか、のどちらかです。そしてその選択肢では私の中ではそれぞれ1軒ずつしかありません。うまいのは寿司ネタが豊富な日系店ですが、たらふくは韓国系店です。ネタが絶対に一口では入らない厚みと大きさに圧倒されるのです。これは数ある寿司屋の中できちんとブルーオーシャン化させているともいえるのです。

かつて読んでいた経営読本に「人に負けない特徴を二つ組み込んだ商品を作れ」とありました。「特徴 x 2」は競合相手が出にくいのです。例えば上述の日系のすし屋は他のすし屋にはないネタの豊富さ、品質、更に良心的価格と三拍子そろっています。なのでテイクアウトなのに電話で注文して1時間待ち、ピックアップには長蛇の行列という他ではあり得ない成功振りなのです。

個人的にはProductがしっかりしておりPriceが妥当であれば極端な話、PlaceとPromotionは二の次でも行けると思っています。なぜなら商品に対する価値判断権は今も昔も客が握っているからです。いわゆる口コミマーケティングというもので現代のSNSは昔の本当の口コミの電子版だと考えればよいでしょう。流通や店の場所についてもその商品が欲しければどこまでも顧客は探し当ててやってくるものなのです。

日本はいまだにPrice主導型マーケティングになっていると思います。しかし、本当に儲けている人はProduct重視の姿勢を崩さず、案外皆さんが知らない会社だったりするものなのです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月10日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。