諮問委員会の人選
西村康稔経済財政・再生相は12日の記者会見で、感染症の専門家で構成する「基本的対処方針等諮問委員会」に慶大教授の竹森俊平氏ら経済の専門家4人を加えると発表した。
専門家会議の尾身副座長が5月4日の記者会見で、新型コロナウイルスをめぐる政策決定には医療、経済の2つの視点をもとに判断して欲しいと「何度も政府にお願いをしていた」とし、政府からは「わかった、なんとかしよう」と返事があったことを明かしたが、それを受けてのものだ。
竹森氏のほかに慶大客員教授で東京財団政策研究所の研究主幹も兼務する小林慶一郎氏、阪大院教授の大竹文雄氏、慶大教授の井深陽子氏の3人を起用する。
新型コロナに関して緊急事態宣言等を巡る政府の判断が、医療、公衆衛生、ウイルス学等の専門家による専門家会議に丸投げという批判もあった中、経済専門家の視点が関与する事は遅過ぎたとは言え望ましい事だ。
一方で筆者は、経済専門家の人選が財務省の息の掛った所謂「増税翼賛会」からの起用となるのではないかと危惧していた。
国家百年の計
さて、竹森氏について見てみると、2014年の消費税率8%への引き上げについては、「2014年4月の消費増税による反動は異常でない。2015年10月の再増税も延期することはなかった」と主張している筋金入りの増税派だ。
小林氏については、「オオカミ少年と言われても毎年1冊は財政危機の本を出していくつもりです」と述べている、確信的緊縮財政論者である。
労働経済学や行動経済学を専門とする大竹氏も「消費税にはほとんど逆進性はない」等と発言しており、消費増税論者とみられる。
なお、井深氏は医療経済学を専門としており、税制、財政については、特段の強い主張は見当たらない。
対新型コロナ政策としては、先ず医療崩壊を起こさずに、かつ経済崩壊を起こさず、コロナ直接死と経済関連死の相和が最小となる方程式を立案、実行する事が要諦である。
そのためには、医療体制の整備、適切な速度での経済再開、ポイントを絞った上での休業要請と補償、経済恐慌に陥らせないための大胆な減税と財政出動、コロナと共存して行くための社会構造・経済構造の変革等が必要である。だが、果たしてこの人選は適切か?
もし安倍政権が何の因果かは知らぬが、近視眼的な算盤合わせに血道を上げる財務省主計局に気兼ねし国家百年の計を見失うなら、この有事に鼎の軽重が問われよう。
「ときは今 あめが下知る 五月かな」
奇しくも今回のコロナ禍により、与野党政治家の内で、内憂外患、即ち財務省と中国に物言う気概のある者とそうでない者とが色分けされつつある。国乱れて忠臣現ると言う。その兆しがあるのは日本にとって不幸中の幸いである。
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佐藤 鴻全 政治外交ウォッチャー、ブロガー、会社員
HP:佐藤総研