世に出ている論文はBCG仮説に肯定的なものが多いのですが、イスラエルからBCG仮説に否定的な研究が発表されました。
BCGワクチン接種の若年成人と非接種の若年成人における新型コロナの感染率(JAMA Network)
この論文には期待外れの点が2つあります。
- 死亡者数ではなく感染者数を用いているため、検査の方針や精度に大きく依存している。
- 1979年から1981年に生まれた人と1983年から1985年に生まれた人を比較している。対象集団が驚くほど小さいというか、ひどいチェリーピッキングとしか言いようがない!
以上の2点から、この論文にレビューする価値があるとは思いませんが、その死亡者数のデータを利用してBCG仮説を検証するために、イスラエルの状況を分析してみましょう。
この論文によると、イスラエルでは1955年から1982年までの間、国の予防接種プログラムの一環として、BCGワクチンがすべての新生児に日常的に投与されていました。
-> 38歳から65歳までのイスラエル人のほとんどがBCGワクチンを接種していた。
年齢グループを「0~39歳(BCG非接種)」、「40~69歳(ほとんどがBCG接種)」、「70歳以上(BCG非接種)」に分類し、前に私がBCGを一度も義務化したことのないイタリアをスペインやポルトガルと比較した時と同じように、イタリアとイスラエルを比較してみました。
まず、下のグラフは人口100万人あたりの死亡者数を年代別に示したものです。すべての年代でイタリアとイスラエルの間に大きな差があることがわかります。
2つ目のグラフは、イスラエルやイタリアでは70歳以上のほとんどがBCG接種を受けていないため、年代別の違いを比較するために70歳以上の人口100万人あたりの死亡者数を100とし、年代別の相対的な死亡者数(人口100万人あたり)を示しています。
そして3つ目のグラフは、両国について70+=100とし、さらにイタリアの全年代=100にしたものです。イスラエル人の40歳から69歳が40%も下がっているのがわかりますね!この分析では40歳から69歳のイスラエル人だけがほとんどBCG接種を受けています。
イタリアと比較してイスラエルの状況を分析することで、BCG仮説がまた検証されました。
ところで、超正統派ユダヤ教徒は反ワクチンです。彼らのコミュニティでは、イスラエルやニューヨークで新型コロナの感染拡大を経験しており、ブネイ・ブラク地区に住む約20万人の超正統派の38%が感染している可能性があり、全国平均よりもかなり高くなっています。
超正統派地区の封鎖要求、イスラエルで緊張高まる(The Guardian)
超正統派ユダヤ人はイスラエルの900万人の市民の12%を占めていますが、2つの大規模な超正統派の拠点がイスラエルのウイルス死亡者の37%も占めています。
イスラエルのウイルス死亡者の37%を占める2つの超正統派の拠点(The Times of Israel)
そうすると、論文の著者らが反ワクチンか超正統派ユダヤ人という安っぽい陰謀論がありえるかもしれません。
出典(すべて5月14日にアクセス):
COVID-19 pandemic in Italy(Wikipedia)
Israel Science and Technology Directory
PopulationPyramid.net
編集部より:この記事はサトウ・ジュン氏のブログ「JSatoNotes」2020年5月14日の記事より和訳して転載させていただきました。快く転載を許可してくださったサトウ氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJSatoNotesをご覧ください。