陸自は本来90式戦車を改良して使い続ければいいものを、わざわざ大金かけて10式を開発、調達しています。戦車だけあれば戦争できるもんでもないでしょう。
それで金がないので戦車に随伴する歩兵戦闘車も更新できておりません。80~90年代に採用されたその他の装甲車輌も更新されていません。
10式を開発、調達する金があれば本来90式を近代化して、これまた高すぎて本来の数にも足りない、89式装甲戦闘車を近代化あるいは更新も可能だったはずです。しかも装軌式の73式装甲車も近代化すれば良いものを用途廃棄して、路外走行能力が皆無にちかい装輪式の96式を第7師団で使っている。米軍ですらM113やパラディンを使い続けているのに。
戦車は廃棄するにしても解体は金がかかります。用途廃止にするならば転用するべきでしょう。例えばイスラエルのナメルのような重装甲APC、あるはロシアのターミネーターのような重火力の火力支援車などに転用できるでしょう。
APCならば砲塔をとって、装甲を強化しても40〜45トン程度でしょう。エンジンは10式のものを転用するか、馬力を減らして800~1000馬力程度にする。ナメルは60トンでエンジンは1200馬力ですからそんなものでしょう。あるいは装備庁が開発しているハイブリッド駆動を搭載することも検討すべきです。
サスペンションは複雑な油圧である必要はなく、輸入物のトーションバーでいいでしょう。そうすれば整備は楽で維持コストも下がるでしょう。エンジン縦置きにして、車体後部にランプドアとキャビンへの連絡通路を作る。車体は上部に延長する。必要があれば車体を延長する。こうすれば乗員2名+下車歩兵8名程度は収容できるでしょう。
装甲にはマット装甲や格子装甲も採用して全周的に強化、車体下部も耐地雷装甲にする。履帯は40トンクラスならばゴム履帯が利用可能ですからこれを採用すれば1トン軽量化できます。武装は12.7ミリのRWS程度でいいでしょう。必要ならば20ミリ機関砲などでもいいでしょう。あとエアコンと補助動力装置は必要です。またUAVなどの運用能力も蒸すべきでしょう。
90式は340輌もあるので、APC型を120両程度にして、その他先述の火力支援型(これは砲塔変えるだけ)、96式自走120迫撃砲の後継、対空型、指揮通信車などファミリー化もできるでしょう。余った120ミリ砲はどこぞの国にでも販売すればよろしい。ラインメタルの製品と互換がかのうです。
既存車輌の転用は、これまでの整備やコンポーネントのアセットを流用できるので維持費が少なくて済むし、開発、調達コストも低く済みます。開発にかかる時間も少なくて済む。多額の税金を費やして調達した装備はできるだけ有効に使うべきです。三菱重工ができないなら海外のメーカーに頼めばよろしい。
浮いた予算で、20式小銃の光学照準器やグレネードランチャーなどを調達するとか、UAVを調達するとかしたほうがよろしいと思います。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年5月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。