私の立ち位置は基本経済クラスター。人として無論「コロナ死+経済死」の最小化が一番望ましいと考えている。ただ、経済クラスター的にはどちらかというと自粛が効果がないと主張することがポジション的にはかなっている。
経済的な対策については若干まとめてはみたが、緊急事態宣言が部分的にとは言え解除されつつあるいま多くの人々の間でくすぶっているのは、みんながこんなにつらい想いをして、いくつもの企業倒産を生むほどの経済的損失を生みながら行った自粛が果たして効果があったのか、なかったのかという問題だ。効果がないという主張もたくさんある。ここを検証しないと先へ進めない。次の感染の波が起こった時に防ぎきれない。
ロックダウンは必要なかった? 「外出禁止は感染抑制と相関がない」と研究結果(Newsweek日本版)
ロックダウンをした英国とロックダウンをしなかったスウェーデン。
英国 スウェーデン
ロックダウン 有 無
ピーク 4月 4月
死亡率 0.04% 0.03%
経済 崩壊寸前 影響少ない
失業率 2倍に増加 変化無 pic.twitter.com/svC3wepofq— springstorm (@sprgstrm) May 13, 2020
まず、「コロナ死」については超過死亡数の検証をさせていただいた。さらには最近の報道で日本では超過死はほとんどないという考察が多い。亡くなられた方には大変恐縮だが、月間に通常十数万人が死んでしまう日本では千人以下の死亡者数は紛れてしまうのだろう。むしろインフルエンザ死は減っている可能性があると聞く。
東京都内の死亡者数、新型コロナ感染症拡大局面でも急増見られず(ブルームバーグ)
この図は西浦氏が12日のニコ生で出した新しい数字。棒グラフが新規感染者数で、3月27日でピークアウトしたことがわかる。緊急事態宣言の「8割削減」の前後で減少率は変わらない。折れ線は実効再生産数(右軸)。 pic.twitter.com/GwksNsC5et
— 池田信夫 (@ikedanob) May 14, 2020
3月のRtの上昇は入国者、帰国者が持ち帰った感染だと推測するのが筋かなと。
一方、新しい調査結果として欧米とははるかに低いものの0.3から0.6%程度の潜在的な無症状の感染者、献饌経験者が存在すると。これが正しい数だとすると、無症状のままの感染者、感染経験者がたくさんいることになる。日本人口1.26億に抗体検査結果の0.6%を掛けると75万人あまりが調査時点で感染していることになる。他の報道などから推測するこの抗体検査の調査時点は4月終わりから5月。厚労省の発表ベースで1.6万人程度のPCR陽性者数となるので、1.6万人割る75万人で2%あまりしか把握できていない可能性がある。
これらの前提において以前行った潜在的な感染者が多数いると仮定した場合のシミュレーションをやりなおした。
フィッティングさせているので当然だが、かなり実際のデータと潜在者→顕在者モデルの数値を一致させることができた。前回のシミュレーションだと相当多めに海外からの帰国、入国者の数を見込み3月のRtの上昇を説明できたのだが1日数百人単位だとシミュレーションモデルではあまりRtが上昇しなかった。この前提における新規感染者のグラフも作ってみた。どうしても3月末に新規感染者のピークがこない。
そもそもこのモデルだと「自然」に感染者が減っていくことが説明できない。当然、人口の0.6%では集団免疫など生じない。あくまで仮説なのだが、日本人の間で感染しても発症しない因子がかなり多く存在するのではないだろうか。逆に言えば、発症する因子を持っている方々には感染しつくしているか、高齢者で隔離されているか。
この仮説だと、院内感染が連続していくことも説明ができる。この因子がBCGなのか、HLA抗体なのか、私には分からない。R0=2.5という前提はいろいろな統計を見ても、欧州の超過死統計を見ても、当てはまるように考えられる。新型コロナウィルスの感染力はそこそこあるのだ。ただ、日本人、アジア諸国の人々は発症、重篤化しづらい因子があるのではないだろうか?
R0=2.5という前提はいろいろな統計を見ても、欧州の超過死統計を見ても、当てはまるように考えられる。新型コロナウィルスの感染力はそこそこあるのだ。ただ、日本人、アジア諸国の人々は発症、重篤化しづらい因子があるのではないだろうか?
最後に肝心の自粛の効果。このモデルにおいて、4月7日以降の「自粛」を外した場合のシミュレーションを行った。現在の感染者累計が2.5倍程度になったのではないだろうか?死亡者も同様に増えていたはずなので、千人を超えていたのではないか。
現在、実際にPCR陽性者の数も、PCR検査の陽性率も下がっていることので、この事実にはかなわないが、自粛によって顕在化している感染者数も、死亡者数も増えていたのが妥当な推測ではないだろうか?ただし、前述の日本人、あるいはアジア人の特殊な因子により有症者、重篤者が減っていると。結論から言えば、実際に自粛が開けて、接触密度が上がった時にどうなるかを試してみるしかない。これまでのところで言えば、かなり顕在感染を抑えられるであろうとは推測される。
*1:ただし、原著への言及を見ると、ロックダウンしなかった場合の死亡者等の予測に感染モデルではなく正規分布を当てはめているので減少しているようにみえるだけだという指摘がある。調査結果をまとめたグラフを見ると各国でロックダウン前後で死亡者数等が変化がないようには見える。
これは衝撃的ですね。死亡数の推移でいえば、むしろロックダウン前のトレンドを上回っているという。やはり、症状出る前に予想をはるかに上回る潜在的な感染者が存在すると考えないとこれはあり得ないのではないでしょうか? pic.twitter.com/Qtb9fconfT
— ひでき (@hidekih) May 5, 2020
*2:ただし、この程度の数だと「紛れて」しまうレベルで武漢ウイルスから欧州株に3月で入れ替わったことが説明できない。はるかに多い無症状(不顕性)の感染者が入国したか、2月の時点で日本に入ってきたかと考えざるを得ない。しかし、エビデンスが見つからない。
SARS-CoV-2ウイルスは中国、武漢発祥:厚労省はちゃんと仕事して!(個人的メモ)
*3:「港」とあるが「空港」も含む。
編集部より:この記事は「HPO機密日誌」2020年5月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。