ATV産業振興のために、規制緩和をすべき

陸自、「汎用軽機動車」の評価試験を水陸機動団で実施(東京防衛航空宇宙時評)

陸上自衛隊はV-22オスプレイに搭載する軽車輌として、川崎重工業製のATV(All Terrain Vehicle:全地形対応車輌)をベースとする「汎用軽機動車」の評価試験を行なっている事が、本サイトの取材によりわかった。

評価試験に使用されているのは川崎重工業の民間向けATV「MULE PRO-FXT(EPS)」の、道路運送車両法に適合した国内向けモデルで、航空機搭載用の固縛フックが追加されている。

ベース車輌のMULE PRO-FXT(EPS)は重量990kg、全長3,450mm、全幅1,617mm、全高1,970mmの4輪駆動車。エンジンは出力35kw、水冷4ストローク直列3気筒のガソリンエンジンを使用している。燃料タンク容量は30リットル、最大速度は時速72km、最小旋回半径4.8m、乗員4名、最大ペイロードは354kg(乗員4名時)、最大牽引質量907kg。

同シリーズの「MULE PRO-FX(EPS)」は、大手消防車メーカー株式会社モリタから高い機動性や悪路における走破性などが評価され、同社の新型小型消防車「Red Ladybug」のベース車輌としても採用されている。

MULE PRO-FXT EPS(カワサキモーターコーポレーションUSAサイトより)

これが不思議なのは引火に弱いガソリンエンジンを採用していることです。ディーゼルエンジン型も採用できたのに不思議なことです。バイクと同じようなものだと思ったのでしょうか。他国の軍隊ではディーゼル型が多いです。しかも兵站上も問題です。

トライアルをしっかりやって、本採用ではディーゼルエンジン型に変更して欲しいものです。
水陸両用機動団ではMV-22搭載用以外にも60ミリ迫撃砲の弾薬運搬などにも使用されるかと思います。また第一空挺団でも採用すべきです。その場合はパラシュート投下を前提とした改良を行うべきですが。

以前から川重の偉い人には、御社の製品で、軍需で最も見込みがあるのはATVだと申し上げておりました。ATVは、ぼくは21世紀のジープだと思っています。

世界の軍隊で今後多くの需要が見込まれるはずです。今後は電動型、ハイブリッド型もと普及し、またUGVのプラットフォームとしての需要も見込めます。少なくともP-1やC-2を売るよりはよほど簡単です。

川重はすでに民生品を世界中に売っており、バイクも含めて販売、メンテのネットワークと軍民両市場へコミットしています。他国の軍隊に売るのはかなり容易です。

ただ川重には軍用としての経験が足りないので外国のカスタムメーカーと組むのがよろしいかと思います。すでに消防ではご案内のようにモリタと組んでいます。これも海外で売れるでしょう。

国内の問題は法的な規制です。日本用にあれこれ改造しないといけない。これは外国のATVも同じです。できれば官民両方ともに規制を緩和すべきです。少なくとも官需に関してはすぐにでも行うべきです。電気製品の規制のPSEは、官需は除いています。

国内市場が大きくなればATVビジネスの拡大に寄与できるでしょう。警察や地方自治体でもどんどん採用すべきです。また災害用にも有用です。我が国のような自然災害が多い国では、アルゴなどの水陸両用のATVももっと開発されていいはずです。

規制が多いことがビジネスとしての可能性を奪っているのではないでしょうか。規制が緩和されたらトヨタなども参入するかもしれません。

そのためには防衛省、国交省、経産省が横の連携を取って動くべきです。

Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。

European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
Hitachi wins Japanese bulldozer contract

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年5月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。