市長の意識が低い所では10万円の振り込みが遅い

八幡 和郎

10万円給付、自治体で時差 電子申請不備多数、対応苦慮―新型コロナ」(時事通信)などという記事が流れ、電子申請の受付を中止した都市もあるという。しかし、その一方で、気が利いた市町村では5月の前半から電子申請分の振り込みが続々と始まっている。

その差はどこから出ているかをいろいろヒアリングしてみた。まず、暗証番号を忘れたので申請できないというのがある。そのために、市町村役場に問い合わせが殺到しているのだが、銀行のキャッシュカードでも暗証番号が分からなくなったら再発行には一週間ではすまないから仕方ない。

人口48万人の大分市では、5月11日から振り込みが始まっているが、佐藤樹一郎市長によると以下のようなことだ。

電子申請件数10056で,間違いなしが9006件。残り1割の誤りの半分は、銀行口座の情報が読めなかったり違っているケース、2割が世帯主以外が申請しているケース、その他世帯メンバー以外の人の分まで請求しているケースなどだそうだ。

オンライン申請の一割五分ほど、150件ほどは軽微な誤りで、例えば申請書に書いている口座番号と添付した通帳の番号が一字だけ違うような例では、電話で確認した後に、市役所側で修正して正として受理している。また、3通オンラインで提出してきた場合は電話で確認して2通目、3通目を破棄し、1通目を正として受理している。その他は、再度の出し直しをお願いしているが、半分くらいが再申請をオンラインで行い、半分が郵送の書類に変更しているということである。

やはり、すでに振り込みを始めている滋賀県甲賀市の岩永裕貴市長に拠れば、細かい間違いはできるだけ電話で聞いて市役所のほうで修正しているという。

福岡市は、9日時点で約1万8000件のデータを銀行に持ち込めたが、最初は照合作業に手間取ったが、職員手作りの照合システムが軌道に乗って1日の処理件数は約3000件になっているという。

東京都江戸川区は修正を後回しにして、17日までに、オンライン申請の1万5217件のうち約85%の入金手続きを終えたそうだ。

それに対して、18日から給付を始めた品川区は約1万1600件の申請のうち、入金手続きができたのは680件だそうだ(21日の報道)。目視で姓名の間の1字空けの有無や、合併前の古い銀行口座番号での申請を1件1件修正し、初日は約7割に不備が見つかり、1件も処理できなかったが、作業のルール作りや簡易プログラムにより、1日の処理数は350件になったという。

しかし、よその市役所や区役所では、振り込みをするのに支障のない間違いは無視したり、治したりしているのをお役所仕事でやっているとこういうことになる。「作業のルール作りや簡易プログラムにより」スピードアップできたということは、準備もせずにいきなり作業に入ったので大失敗したと言うことらしい。

たしかに、文書での申請の方は、従来型の作業であるので、バーコードで楽に処理できるらしい。しかし、発送はなかなかたいへんで、たとえば、封筒の準備にてまどったなどというところもある。

そういう意味では、電子申請など受け付けずに、文書申請に一本化した方が、手間はかからないというのは確かである。しかし、行政の電子化のテストケースとしての意味もあるし、15%程度に留まっているマイナンバーカードの取得を促進するという意義もある。

そして、なによりも、文書が着くよりはるかに前に申し込みと振り込みが可能にもかかわらず凝視の怠惰で遅らせるのもいかがかと思う。そのあたり、どこまで拙速を以てよしと成す精神で対応できたかは、市町村区長の意識を図るリスマス試験紙だったと云えよう。

職員のほうも、行政の電子化による合理化をおそれてある種のサボタージュをしたと言われても仕方あるまいし、それを諾々と承知して電子申請を止めてとかいってる首長は次の選挙ではご退場いただきたいものだ。