スペイン銀行による今年のスペインはGDPマイナス13%、財政赤字は現在のGDPの2.6%から一挙に7%から11%の枠内に転落すると予測されている。予測される負債は現在のGDPの100%から139%に上昇。イタリアがGDP189%そしてフランスが147%まで上昇すると予測されているのと比較すればスペインはまだ両国よりも低い負債であるが、支えきれなくなると懸念されている。(参照:libremercado.com:libremercado.com)
El coronavirus agrava la dependencia del Estado: casi 20 millones de personas cobrarán del sector público https://t.co/R182CaBSXM
— Libre Mercado (@libre_mercado) April 24, 2020
スペインの昨年末の就労人口は2315万8800人と統計されている。失業者324万6000人の中で現在も手当てが支給されているのは2002万2300人。
スペインが3月12日から非常事態宣言を発令して大半の生産商業機能が停止するという封鎖に入った時点からの休業補償者の数は4月15日の時点で388万9000人と政府が発表した。
さらに、封鎖以降に廃業した自営業者は101万6700人。(参照:okdiario.com:libremercado.com)
すなわち、4月中旬の時点で働くことができるのに職場を失っている人、休業補償を受けている人、自営業を廃業した人を合計すると815万1700人が職に就いていないということになっていた。それは昨年末の就労人口から見ると35.2%という割合になる。
政府は休業補償者は失業者ではないとしている。企業が再開して活動を取り戻した時点で彼らが職場に復帰するのであるから失業者ではないとしている。しかし、例えば、廃業した自営業者101万人が経営していた会社に勤務していた休業補償者は職場に復帰することは既に不可能となっていることから失業者としての手当てに切り替えているはずだ。
休業補償を受けている凡そ400万人の中でどれだけの人が職場に復帰できるか疑問の余地はかなり高い。
スペインの企業の95%は中小零細企業である。中小企業連盟によるアンケート調査でも96%の企業がコロナウイルス感染による封鎖の影響を非常に悲観的に捉えている。その中で2000社以上のオーナーからの55%はこのさき半年の間に現状の雇用を維持することは出来ないと回答したという。更に、60%の企業は12カ月以内に社員の削減を明確にしているという。そのようなことから、最終的に120万人は職場に復帰できないであろうと予測されている。
政府が保障した給与補償の期間は6月末までだ。その延長の必要性が求められている。何しろ、休業補償を受けている被雇用者が全員7月から職場に復帰することは不可能だからだ。そんなことから、今年2月の失業率は13.5%であったのが、今年末には20%を遥かに超えると予測されている。
スペインが今回の危機で弱い立場にあるのは、スペインの経済の柱になっているのが観光産業と自動車産業というこの二つへの依存度が高いという点である。かつてはそれに不動産バブルが加わっていた。今年後半のスペインへの外国からの訪問客は激減する可能性が非常に高い。そのため、ホテル業界の60%が社員の削減が必至と見られている。レストランの20%が廃業し、バルは既に1万5000軒が廃業した。それが4万軒まで増える可能性はあると予測されている。
また自動車業界も販売が30%落ち込んでいる。(参照:libremercado.com)
現状の雇用を出来るだけ維持するために企業が政府に要求しているのは税金の控除やモラトリアムである。スペインの場合は税金のモラトリアムはあっても、それが2か月とか非常に期間が短いことから実質的には企業にとって有益にはならない。また控除についてもまず最初に税金を先に支払ったあとに税務署からその返金があるということになっている。だから、まず支払うための資金が必要ということになる。
ヨーロッパで政府から企業への支援率が一番高いのはGDPにおける負債が59%しかないドイツである。ドイツはGDP比率から見て60%に相当する支援がある。それに対してフランスは23%、イタリア21%、英国17%に対してスペインは僅かに11%しかないという。スペインは財源が少なく負債も多いというのが理由だ。それにしても、スペインと財政事情はほぼ同等にあるイタリアの企業への支援率が高いのは意外である。(参照:abc.es)
今年後半のスペイン経済が絡んだ社会事情は非常に厳しいものになることが予測される。コロナウイルス感染における政府の対応には国民の間で強い不満もある。いまの政権与党は議会で過半数を有していないこともあって、恐らく来年1月頃に総選挙になると筆者は見ている。