集団からの誹謗中傷(炎上)に対する対応(上)SNS中傷3つのタイプ

佐藤 大和

bBear/写真AC

1  はじめに

フジテレビ「テラスハウス」に出演していたプロレスラーである木村花さんが亡くなったことで、SNSによる誹謗中傷問題が注目を集め、現在、多方面からSNSにおける誹謗中傷問題について議論がされている。

筆者は、いままで、著名人に対する集団による誹謗中傷問題、いわゆる炎上問題を多数手がけてきたが、この問題を考える際、個別の誹謗中傷問題と、集団による誹謗中傷問題の対応方法が異なることを意識して問題点を考えていかなければならない。

今回、木村花さんが亡くなった原因は定かではないが、報道を前提にする限り、誹謗中傷のなかでも集団による誹謗中傷(炎上)が原因とされている。

ところで、筆者は、前提として誹謗中傷とは「違法性がある書き込み」だと考えている。具体的には、名誉毀損、侮辱、業務妨害、脅迫のような犯罪行為として処罰されうる書き込み、そして、「ウソつき」「馬鹿」、「まるで小学生みたい」などその人の人格非難や否定に繋がる書き込みも、当該書き込みの回数、表現自体の悪辣さ、執拗さなどの事情から、違法性が認められ得ると考えており、誹謗中傷の一種だと考えている。

2  誹謗中傷に対する法的対応

(1)個別の誹謗中傷に対する法的対応
個別の誹謗中傷問題に対する法的対応は、名誉毀損等を理由として刑事・民事で対応することができる。具体的には、民事として、名誉毀損等を理由に、発信者の情報開示を求めたうえで、発信者に対し慰謝料請求等をすることができる。

また、刑事では、名誉毀損等を理由に警察に対して被害届等を出すことも考えられる。誹謗中傷の内容が、身体や生命等に危害を加える可能性がある内容であれば、脅迫を理由に被害届等を出すことも考えられる。

もっとも、民事は、現在、多くの弁護士が指摘をしているとおり、発信者の情報を特定して、誹謗中傷をした者に対して損害賠償責任が認められるまで、原則として裁判を3回しなければならず、時間も費用もかなりかかる。

そして、その割に、名誉毀損による慰謝料額は高くはない。この点については、現在、総務省にて、2020年4月から、誹謗中傷をした者の情報開示の手続きに関して、時間の短縮を含めて手続きの簡易化ができないかを含めて検討がされている 。

また、刑事は、警察が迅速に動いてくれるケースの多くは、生命・身体に危害を加えることを内容とした脅迫等の場合であり、名誉毀損や侮辱ではなかなかすぐには動いてくれないという実態がある。筆者も過去に何度か代理人として名誉毀損罪や侮辱罪を理由として、被害届等を提出したが、警察はなかなか動いてはくれないということがあった。

(2)集団による誹謗中傷に対する法的対応
他方で、集団による誹謗中傷、いわゆる炎上は、個別の誹謗中傷による対応と同じような対応方法も考えられるが、その誹謗中傷の数の多さから、一つ一つ対応をすることはあまり現実的ではない。

そのため、内容的にあまりにも酷い誹謗中傷については、法的措置をする可能性も検討しつつ、原則として、炎上している本人は、精神的な動揺を招くため、コメント欄を見ず、また自らが対応をしようとはせず、炎上の専門家に相談して対応すべきである。

いらすとや

もっとも、個別の誹謗中傷とは異なり、集団による誹謗中傷の多くの場合、その炎上している本人に対して落ち度があるとして誹謗中傷をされているため、その対応方法は、慎重に検討しなければならず、最優先で対応をしなければならないのは、本人の精神的なケア及び炎上の鎮静化である(この炎上の鎮静化について、筆者は「メディア戦略法務」と名付け、弁護士として、著名人や各企業に対して炎上の事前と事後対応をしている。)。

ところで、集団による誹謗中傷に対しては、今回あまり議論がされていないが、日本の法制度では、十分に対応をすることができないという問題点がある。具体的には、集団による誹謗中傷の場合、上述のとおり、一つの手続きで、画一的に多数の発信者の情報を開示することはできず、また、裁判制度においても、消費者被害のように多数の被害者が生じている場合と比較した場合、加害者が多数いる場合の裁判制度はまだまだ不十分である。

今回の件では、どうしても個別の誹謗中傷問題に関する法制度に注目され議論がされているが、それだけでは、今回のような炎上に対して適切な対応をすることはできない。

3  SNSで誹謗中傷をする人の傾向と各SNSによる誹謗中傷をする層

(1)SNSで誹謗中傷をする人のタイプ
SNSで誹謗中傷をするタイプは、大きく次の3つに分かれる。

まず①攻撃・炎上を娯楽だと感じて意図的に攻撃するタイプである。このタイプは、大群のイナゴのように炎上している箇所に大量に集まり、意図的に炎上を盛り上げ、炎上が鎮静化するまで誹謗中傷を繰り返すタイプである。

また、②自分たちが正義だと思い(思い込んで)書き込むタイプである。このタイプは自分の価値観が絶対的に正しいと思っていたり、報道された情報を疑わず鵜呑みにしたりして、社会正義だと思い、炎上している人に落ち度がある(または悪である)ことを前提に誹謗中傷をするタイプである。また、このタイプは社会正義や表現の自由を盾に自分たちの行為が悪いとは思っていないことも多い。

最後に③著名人がコメントを見ない、もしくは気にしないと思っているか、自分の書き込みが誹謗中傷ではなく、単なる批判もしくは感想と考え、感情的に誹謗中傷するタイプである。このタイプは、誹謗中傷と批判、意見・感想の区別を意識せず、書き込んでいるタイプが多い。(下に続く)

佐藤 大和   レイ法律事務所代表弁護士、「芸能人の権利を守る団体 ERA」共同代表理事

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