前回記事「コロナ禍のロイヤルホスト、生き残り策はあるのか? 」では、今後の飲食店は「内」と「外」を持つ、つまり店内飲食だけではなく持ち帰り商品も充実させるべき、と結論付けました。そういった販売手法で思い浮かぶのは、吉野家や松屋・すき家などの牛丼チェーン店です。 今回のコロナ禍でも被害は少ないであろうと推測していました。
ところが、週刊エコノミストの記事によると、
コロナ耐性を表す「ストレス耐性」ランクで、吉野家はワースト1位、すき家(ゼンショーHD)はワースト3位
と低順位です。前回の結論は間違っていたのでしょうか?
指標値は極めて低い牛丼チェーン店
記事では、「ストレス耐性」という指標を使って分析しています。ストレス耐性は、「損益分岐点(安全余裕率)」と「所得弾力性」という二つの指標を使って算出しています。
- 「損益分岐点」はこれだけ売れれば費用の元がとれる、つまりトントンである売上高
- 「所得弾力性は」収入が減ったら買うのをどれだけ減らすか
の指標です。つまり、
- 元から利益(粗利)が大きくて
- 収入が減っても、買う量は減らさない
といった業種が強いことになります。
このストレス耐性が、吉野家は0.0、すき家は3.0と極端に低くなっています。吉野家もすき家も、粗利が少なく、収入が減ったら食べに行かない、とされているようです。
実際の売上減少幅は狭い
では実際の、牛丼チェーン店の状況はどうだったのでしょうか?
ITmediaビジネスオンラインの記事によると、
売上の前年同月比では、吉野家 98.2%、松屋 94.7%、すき家 92.2%
松屋の広報担当者によると「想定よりは悪くない」
では、なぜ売上高を維持できたのでしょうか?理由は「コロナによる客数減を、客単価増が補った」ためです。自粛による家での食事回数の増加、つまり「持ち帰り」需要の増加を、 お持ち帰りに合わせたキャンペーン投入で捕らえ、 客単価を増加させていたのです。
客単価は以下の式で表されます。
客単価=買上点数×平均商品単価
吉野家は、「ご家庭の食事支援」や「テイクアウトキャンペーン」、松屋は「テイクアウト限定“おかず単品弁当15%~25%オフ”キャンペーン」、といった持ち帰り需要に応える施策を行いました。その結果、家族分のお弁当購入などによって買上点数が増加したと思われます。
「内(店内)」と「外(持ち帰り)」両方を持っている牛丼チェーン店ならではの強みが活かされたわけです。
「ストレス耐性」の前段階に注力
さて、話をコロナ耐性のランクに戻しましょう。なぜ牛丼チェーン店はコロナ耐性ランクで下位だったのでしょうか?
それはこの「ストレス耐性」指標の作り方に理由があります。ストレス耐性は客数が減る→「売上高」が減る→粗利が減る→費用が賄えず赤字になるといった因果関係になっています。つまり売上が減ることが前提になっているわけです。
ところが、牛丼チェーン店は、お持ち帰り需要を捕らえ、客数が減っても「売上」は減らしませんでした。ストレス耐性の因果関係の前段階で対策していたわけです。そのため、指標が低くても、コロナの影響は最小限に抑えられました。
結論はやはり、前回の記事と変わりません。今後の飲食店は「内(店内)」と「外(お持ち帰り)」の二つの販路を持ち、売上を落とさないこと。 これが鉄則になると思います。