大阪府の新型コロナ対策本部専門家会議が6月12日に開かれた。政治的利害のからむ東京の専門家会議と違って、データを素直に見るとこうなるという分析である。
注目されるのは、阪大の中野貴志氏によるK値データの分析(12:30~)だ。実効再生産数ではわかりにくい2月と3月の二つの波が分離され、3月中旬以降はKが単調に減っていることがわかる(大阪府も全国も同じ傾向)。
中野氏の一定減衰仮定によると、累計感染者数の増加率が飽和して自然に減衰する場合、0.25<K<0.9の範囲ではKは直線的に下がる。K=0のとき収束するが、0.25以下の動きは直線の傾き(減衰定数)kから予測できるという。
このデータからわかるのは、3月中旬以降の感染の減衰は自然減だということである。2月に武漢発の第1波で感染者が増え、それが3月9日で終わったあとヨーロッパ発の第2波が来たが、次第に入国制限が強化されて輸入感染が減り、3月末の全面入国拒否で止まった。
月末に新規感染者数がピークアウトしたのはこの動きをフローで見たものだが、トレンドは連続しており、今後も感染爆発が起こる可能性はきわめて低い。4月7日の緊急事態宣言には効果がなかったと中野氏は明言している。
専門家会議には客観的な事後評価ができない
ここからいえるのは、日本で感染が増えるのは海外からウイルスが入ってきた場合に限られ、その輸入感染が止まると感染が自然に減る傾向が強いということだ。これは感染爆発が起こったヨーロッパとは明らかに違う。
その原因となるファクターXは今後の研究課題だが、専門家会議が警告した感染爆発のリスクは、少なくとも3月中旬以降はまったくなかった。
中野氏の分析は常識的なものだが、東京では出てこない。8割おじさんの言い訳は二転三転し、実測データを説明できない。「42万人死ぬはずがなぜ900人になったのか」という疑問にも答えられない。
大阪でこういう客観的評価ができるのは、政府のやってきた対策を正当化する必要がないからだ。3月の感染増の原因が輸入感染であり、その減衰が自然減だとすれば、水際対策には意味があったが、社会に大きなダメージをもたらした接触削減には意味がなかったことになる。
今回のコロナ対策の効果を専門家会議が事後評価するのは、原発事故の事後評価を東電がやるようなもので、政府の対策は正しかったという結論になるに決まっている。それでは今後の第2波(あるいは第3波)でも、リスクの過大評価と過剰対策で経済が破壊されるおそれが強い。
今回の騒動では、東京の専門家には政府を擁護するバイアスが目立つが、関西の専門家から自由な発言が出てきた。政府は専門家会議から独立した第三者委員会をつくり、ダイヤモンド・プリンセス号から緊急事態宣言までのコロナ対策の効果と負の影響を検証すべきだ。