公選法違反?「都知事にふさわしいのは誰」毎日新聞の報道が物議

アゴラ編集部

東京都知事選(7月5日投開票)を巡り、毎日新聞が20日夕方、「都知事にふさわしいのは誰か」を尋ねた世論調査報道について「公選法違反ではないか」との指摘が続出。ネット上で騒ぎになった。

この調査は、毎日新聞と社会調査研究センターが実施したもので、国政政党の支援を受けている5候補を選択肢に挙げたところ、現職の小池百合子氏の51%を筆頭に、宇都宮健児氏が10%、山本太郎氏が8%、小野泰輔氏が7%、立花孝志氏2%になったしている。一般的に選挙期間中の世論調査報道で、具体的な支持率の数字を含めて公表するのは極めて異例だ。

世論調査を取り扱うベンチャー企業、JX通信社代表の米重克洋氏はツイッターで「こんなの出していいんだ、ビックリ」と驚いた様子。同じく報道に驚いた選挙プランナーの松田馨氏は「公職選挙法 第百三十八条の三「人気投票の公表の禁止」に抵触する可能性があるのでは。どういう理屈で出したんだろう」と首を傾げた。

松田氏が指摘する公選法138の3で定めた「人気投票の公表の禁止」では、

何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない

と定めている。米重氏は「以前ある新聞社と情勢調査をやった時、まずやるまでにかなり時間がかかったことがあった。理由が公選法の人気投票の公表禁止の規定」と振り返り、「情勢記事だから数字はそのまま出さないのだが、法解釈などかなりの確認のプロセスを踏んだ。常識的に言って、選挙期間中にこの数字の出し方はやりすぎと思う」と批判的な見方を示した。

https://twitter.com/kyoneshige/status/1274293992989982721?s=20

こうした見立てに対し、情報サイト「KSL-Live!」を運営する竹本てつじ氏はツイッターで「どうしてこれが公選法で禁止される人気投票の類と解されないかというと、対面や個別の電話取材などで得た意見を集計した報道だから」との見方を示し、た。公選法の逐条解説では、竹本氏が指摘したように、調査員が面接や、電話で回答を得た形で調査した場合は、公選法で制限されている「人気投票に当たらない」としており、特別に扱われている。

実際、国会では過去に公選法で禁止する人気投票の結果公表と世論調査報道の整合性について取り上げられたことがある。2017年11月には、立憲民主党の初鹿明博衆議院議員が「選挙期間中の情勢調査の公表記事に関する質問主意書」を提出し、世論調査報道が選挙結果に与える影響を問題視。

報道の自由は保障されなければならないものではありながらも、選挙の公平性を損なう恐れが大きくある上記報道については、報道の自由に配慮しつつも、禁止すべきだと考えますが、政府の見解を伺います。

と政府側に質した。これに対し、政府は

人気投票の公表の禁止のほかに新たに制限を設けることについては、報道の自由との関係を含め、必要があれば各党各会派において十分に議論していただくべきものと認識している。

などとする答弁書を公表した。世論調査をめぐる報道の規制について、政府側は報道の自由を確保する見地から慎重な姿勢がうかがえるが、世論調査のプロが驚くような形で、選挙期間中に数字を明言した毎日新聞の世論調査報道が異例なことに変わりはない。

アゴラ執筆陣では、渡瀬裕哉氏が「この毎日新聞の記事は地味だが公選法の暗黙規定を破壊する快挙」との好意的な見方を示し、「これで横一線とか、猛追とか、選挙の隠語文化がなくなる」と、世論調査報道の表現のあり方に一石が投じられる可能性を指摘した。