リモートワークの推進は長期的に企業を衰退させる

新型コロナウィルス感染拡大を機に、日本でもリモートワークの推進する「意識高い系企業」が増えてきました。

社員全員をリモートワークにシフトして、オフィスを縮小すると宣言する「ドヤ顔経営者」もいるようです。

確かに、リモートで仕事が完結できれば、通勤時間も節約でき、出勤の準備の時間も無くなります。やることが決まっている定型的な仕事に関しては、通信環境やパソコンなどのインフラが整備されていれば、リモートワークの方が効率的といえます。

しかし、リモートワークで業務を続けていて、そこから新しいビジネスは生まれてくるのでしょうか。企業の成長には、現状の仕事を忠実にこなして、業容を拡大していくだけではなく、今まで無かったビジネスアイディアからチャンスを見つけ、それを収益に結びつけることが求められます。

新たなビジネスチャンスを事業化するには、クリエイティブな発想がぶつかり合う「化学変化」が必要です。テレビ会議では、全員が参加で会議が終わると、退出してしまい、コミュニケーションは終了してしまいます。「化学変化」の機会は、リモートワークでは生まれにくいのです。

なんとなく、集まって雑談をする、異なる部署の人とランチをする、趣味やプライベートの話で盛り上がる。このような一見非生産的な時間から、思いがけないアイディアが浮かび、それが新しいビジネスにつながっていきます。

イノベーションには、そんな「無駄」が必要で、リモートワークで効率性だけを追求すると、それが失われていきます。

リモートワークに向いた仕事と向かない仕事がありますから、それを上手に使い分ける会社が長期的に成長していくと考えます。リモートワークだけを続けていれば、言われたことを効率的にやるだけの、仕事だけになってしまうリスクが増大します。

リアルなコミニケーションから生まれる価値を、あまり過小評価しない方が良いと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年6月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。