コロナのもたらす心理的影響

岡本 裕明

Hades/写真AC

テニス世界1位のジョコビッチ選手自らが主宰したチャリティーテニスイベントとその関連の集まりで本人を含め多数の陽性が判明した報道には驚きました。記事によるとほとんど感染予防を取っていないかったようでジョコビッチ選手の軽率という以外の何物でもありませんでした。

世界ではプロスポーツイベントがそろりそろりと再開しつつありますがほとんどは無観客で進められています。非常に厳しい環境にあると思います。テレビ越しに見られるとしてもスポーツバーやパブリックビューイングで「盛り上がる」ことができないのが最も残念なところである意味、プロスポーツ選手がスポーツの精神というよりエンターテイナー的なポジションになりやしないか心配であります。

日本の報道を見ていると国内旅行客が一気に増え、街を歩く人で混雑しているのを見ていると当地とは隔世の感があります。というのはバンクーバーを含め北米ではどうも人が街に戻ってきて活況になる雰囲気がないのです。確かにオフィスにも人は増えてきていますし、多くのサービスは受けられます。カフェの外の席には多くの客がいるのも目にします。それでも皆基本は家から何かをしているケースが多いようです。

当地の飲食店も再開していますが、客はまばら。従業員は手持無沙汰というケースは多く、人々が三密を積極的に避けているのは明白で日本を含むアジア圏はあれだけ密なのに比較的感染者が少ないのに比べ圧倒的差異があります。

今後のことについては何とも申し上げられませんが、仮に収まったとしても人々のメンタルに植え付けた恐怖心はアジアに比べて欧米の方がはるかにシビアで相当の警戒心が当面の間維持されるのではないかと推測しています。トランプ大統領の選挙集会がガラガラだったのは民主党が邪魔したというより本当にコロナを怖がっていたとみるべきなのでしょう。

Prachatai/flickr

さて、都知事選が始まっていますが、主要候補者の多くはオリンピックは来年開催できないとみているようです。小池氏は簡素化して開催、宇都宮、山本各候補は中止、小野、立花各候補は2024年まで延期となっています。小池氏は現時点で中止とは言えないと思いますので仮に再選すれば、現時点で簡素化、そして秋の状況を見て更にブレーキをかけるか、そのまま突き進むか決めるのだろうと思います。

個人的にはバッハ会長が言うように来年がなければ中止になるとみていますので小野、立花氏の選択肢はないと思います。では、おまえはどう思うのか言われると正直、暗雲が立ち込めているという気がしています。海外がコロナに関して思った以上にコンサバであり、その時の状況次第では選手をはじめ、各方面から批判とクレームの嵐になることも覚悟しなくてはいけません。また冒頭のジョコビッチ氏の失態は心理的に影響しそうな気がします。

私の周りで在宅勤務(リモートワーク)している人は家で家事と仕事が両立できる生活に慣れ、「会社に行かない」という人は増えていると思います。HISの澤田会長が初の赤字転落の決算を受けて「店舗の時代は終わった」と発言していますが、それはHISの運営の面からも顧客のサービスの受け方も含め両面から「わざわざ出かけてまで」という発想がしみ込んでしまったようです。

企業の投資活動もスローダウンしながら「新常態」に向けた新しいサービスの発掘に各社血眼になるという気がします。雇用については解雇というより自主退社が増えるかもしれません。失業率には就労の意思がある人が分母になりますからもうしばらく働かないという人は失業率には反映されませんが、大きく増えると思います。日本は60歳過ぎた雇員層に仕事をあきらめる人が激増するとみています。

また企業活動はHISの澤田会長が指摘するように、店舗運営からネットを駆使したものに変わっていくトレンドは今後の主流となり、人材はより集約されたものになるでしょう。外国人労働者が減っていますし、アメリカも就労ビザを見直すわけですから国策は内政の守勢が中心になるのでしょう。

コロナ問題は第二波というより「ウィズコロナ」がもたらす人々の防御姿勢が反映する新たなステップに入りこんだような気がします。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年6月28日の記事より転載させていただきました。