例年ですと、この時期は「今年の定時株主総会を振り返る」といったテーマで株主総会の総括をしております。しかし、今年は有事の総会ということで、この29日、30日に延期した会社もありますし、延会、継続会、2回方式といった7月以降に総会を残す会社も100社ほどありますので、まだ折り返し地点といったところですね。総会担当者の皆様には、本当にご苦労様と申し上げたいです。
さて、私が社外取締役を務めております大東建託の総会は26日に開催されまして、私を含め社外取締役3名はリモート出席という形で登壇させていただきました。例年200名以上の株主の方々が現実出席されますが、今年は17名ということで、リモート越しに会場を眺めておりましても、ずいぶんと風景が異なっていました。
ということで、今年は質問はないのだろうな・・・とやや期待しておりましたが、なんと2問も「そこのリモートで出席しておられるガバナンス委員会委員長の山口取締役にお聞きしたい」とのことで、ご指名がありましたので、回答させていただきました。1問は大東建託の政策保有株式(なぜ住友不動産株式だけは政策保有を解消せずに保有し続けるのか、合理的に説明していただきたい)、もう1問は上場子会社(ハウスコム社)との関係について(昨年東証1部に登録替えしたハウスコム社だが、100%子会社化するのか、現状のままか、それとも持分法適用会社にするのか、どのように御社とハウスコムの関係を構築すれば企業価値が向上するのか、当該議論はしているのか)。
私もご質問者の方と全く同じような問題意識を持っておりますし、実際に取締役会やガバナンス委員会で議論をしておりましたので、インサイダー情報に触れない範囲で私の意見を含めて回答させていただきました。おそらく他の上場会社においても、最近は社外取締役さんには厳しい質問が飛ぶ機会が増えているのでしょうね(当該株主の方からは後日、当ブログにもコメントを頂戴しておりますが、本当にご意見・ご質問ありがとうございました!私自身も勉強になりました)。
ところで、他社の総会の様子を新聞報道等からみておりまして、私的に驚いたのがみずほFGと天馬社の株主総会の結果です。みずほFGでは、環境問題の社会的解決を図らない企業への融資をしない旨の定款変更を求めた株主提案に、なんと35%もの賛成票が集まりました。また当ブログでも注目しておりました天馬社では、株主側提案はすべて否決されたものの、会社側提案についても、このたびの企業不祥事に関与したとされる経営陣3名の取締役選任が否決されました。
ESG経営や企業不祥事が、総会の賛否にも大きな影響を及ぼすことを強く印象付けたのではないでしょうか(議決権行使助言会社の影響や3月公表のスチュワードシップ・コード改訂版の影響も大きいような気がします)。コロナ禍における有事の総会対応ばかりに目を奪われ、バーチャル株主総会の是非、株主総会の完全延期の是非、簡素化の是非といったところが話題になりましたが、サステナビリティ(持続性)というところに株主の関心がかなり大きく寄せられていることが一番印象に残りました。たとえ総会は終了したとしても、今後は情報開示、対話という形で株主と向き合わねばなりませんが、ESGの視点は「主たるテーマ」になりつつあるように思います。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。