ディズニーランド再開:ミッキーの懐具合から学べ

関谷 信之

ディズニーランドが再開されました。訪園を楽しむ様子が報道される一方、長期休業の財務面への影響が注目されています。現在のディズニーランドの財務状況はどうなっているのか。それが他企業にどのように影響するのか。考えてみたいと思います。

編集部撮影

莫大な内部留保を保有する企業

2020年3月時点の、ディズニーランドの内部留保は6,851億円、現金は2,566億円。莫大な額を保有しています。仮に休業を続けたとしても「あと9か月は耐えられる」と試算されます(*1)。長期安全性を示す指標、自己資本比率も80%弱。4ヶ月の長期休業をものともしない、盤石な財務体質がなんとも逞しく見えます。

脆弱な中小・小規模企業

それに対し、中小・小規模企業は悲惨な状況が続いています。

華やかなバーやクラブ。繁盛している飲食店。おしゃれな美容院。それらがたった数週間の自粛で困窮してしまう。その脆弱さに驚いた人も多かったのではないでしょうか。

これら小規模企業は自己資本比率マイナス、つまり債務超過の企業が相当数あります。資本が少ないため借入が多い。金利・家賃負担が大きい。そのため短期間の自粛でも、大打撃となってしまうのです。

ディズニーランドと、中小・小規模企業の対比から導かれる解は、「金を持ってる企業が生き残る」ということです。

この結果、企業が「守銭奴化」します。

人件費は極力削る。設備投資は最小限に抑える。利益は最大限貯めこむ。日本企業の大半を占める中小企業が、そのように守銭奴化したら、一気に経済は冷え込みます。

過剰内部留保の議論

コロナ以前、過剰な内部留保が問題になりました。課税導入も検討されたようです。課税の是非はともかく、「設備を投資し、雇用を増やすべき」「給与を増やし、経済を活性化すべき」など、多くの示唆に富んだ意見がありました。法律の枠組みを超え「企業はどうあるべきか」といった議論まで展開されました。

残念ながら、コロナで議論は中断。莫大な内部留保を容認する兆候がみられます。

高収益の結果としての安全性

ディズニーランドのように安全性を高める、つまり現金や内部留保を増やすには、まず稼がなければなりません。稼ぐためには、収益性向上策が必須です。ディズニーランドは、高収益の結果として内部留保が増大しているのです。

つまり
「金を持ってる企業が生き残る」
のではなく
「金を稼げる企業が生き残る」「そうなるにはどうすればよいか」
と考えるべきではないでしょうか。

政府の支援策が十分とは言えず、いまだ再開すらままならない企業が多いかと思います。

それでも、経営者の方々には、
・従業員の貢献度に応じた報酬を与え、能力を最大化する
・適切に設備投資を行い、売上を拡大する
といった、収益性を高める「当たり前」の施策を忘れないでいただきたい、と思います。

[備考]
*1 2020年3月末時点ベースに試算

[参考資料]
株式会社オリエンタルランド 有価証券報告書(自2019年4月1日 至 2020年3月31日)
日本政策金融公庫 業種別経営指標