レジ袋有料化:環境運動は欧米人の自己満足 --- 井上 孝之

海洋プラスチック問題に端を発したレジ袋問題については、ヨーロッパの国々やアメリカの一部の州の人々による「俺様は正しい、お前は間違っている。だから、俺様が作ったルールに従え」運動の一つだと思っています。

他の人の何らかの問題点を見つけて、「お前は間違っている」と難癖をつけて、相手の行動を変えさせることは、「自分は正義を成した」という満足感と、「自分の作ったルールに相手を従わせる」という満足感に加えて、最初にルールを作った者の特権として、「そのルールを自分に有利に作ることができる」という特典までついてきます。

これはCO2削減運動とも「問題点を見つけてきて、自分たちが作ったルールに従わせる」という点で共通しています。ESG投資、SDGs、最近出てきたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)も同様です。

ここで問題となるのは、活動家の目的が「自分たちの正しさを相手に認めさせて、自分たちの作ったルールに従わせる」ことなので、「必ずしも科学的に正しくなくてもいい」と考えていることです。

相手に自分たちが作ったルールに従わせるためには、相手が受け入れやすい論理を用意する必要があります。海洋プラスチック問題も、自分たちが捨てたゴミによって、海の生物の生活環境に影響が出れば良心が痛みます。異常気象が増えて、水害が増えれば、自分も被害に遭うのではないかと不安になります。そういう心の隙に、「我々のルールに従えば、良心が痛んだり、不安になったりすることなくなりますよ」と言って近づいてくるのが彼らの常套手段です。(まるで新興宗教の勧誘です)

従って、「俺様は正しい、お前は間違っている。だから、俺様が作ったルールに従え」という主張のポイントは、相手にとって受け入れやすいかどうかであって、科学的に正しい、あるいは、本当に地球に良いかどうかは関係ありません。

こういう問題が厄介なのは、迂闊に批判すると、「世の中の潮流に反する人間」というレッテルを貼って攻撃してくるので、批判をする前に科学的な根拠をしっかりと集めておく必要があります。

ここで、私の職場の部署長について考えたいと思います。彼はCO2削減もESGもSDGsも大好きで、部署の方針書はそういう言葉が躍っています。部署の社員の仕事内容に何らかの変化があったわけではありませんが、社内では「先進的な取り組みを行っている部署」と見なされるようになりました。

彼は自分が「世の中の潮流に敏感で、そういうことに積極的に取り組む人間」とPRすることで、出世の階段を上がっていきました。彼を見て思うことは、「こういう取り組みをしても、地球環境が良くなるわけではないが、自分の給与明細の数字は良くすることができる」ということです。10年ぐらい前に彼の取組みを知っていれば私の給与明細の数字も多少は違ったのではないかと考えている次第です。

井上孝之
科学的根拠の希薄な取り組みに我が部署長ほど熱心になれないところが私のサラリーマンとしての限界だと気が付きつつある技術系サラリーマン