マナー講師には「はんこマナー」より「令和の電話マナー」の布教を望む

黒坂岳央(くろさか たけを)です。
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最近、マナー講師と呼ばれる方が叩かれるのを見ることがある。有名どころでいうと、「おにぎりに歯型をつかないように食べなさい」とか「ハンコはおじぎをしているように傾けて押す」といったものだ。筆者は守る気はないけど、面白い着眼点だとは思う。

でも、こうしたマナーより遥かに布教を頑張ってもらいたいものがある。それは電話マナーだ。現在進行系レベルで、電話におけるマナー違反にクオリティー・オブ・ライフを下げられているのでマナー講師に頑張って欲しいと心から願っている。

マジで頼む、いきなり電話をかけないで

マナー講師が動き出すのを待たず、この場を借りて主張したい。それは「いきなり電話かけてこないで」というものだ。

多くは営業電話だ。サイトに掲載している電話番号を見て、営業電話がかかってくる。待って、マヂムリ。

  • 昼寝中の子供が起きる。
  • YouTube動画収録をジャマされる。
  • 昼寝を起こされる。

本気で迷惑なんで止めて欲しい。願わくば電話はこちらがお店に問い合わせをする時だけ電源を入れたいくらいだが、事情があってそれは許されない。涙をのんで、このような経済的損害を垂れ流し状態を受容せざるを得ない。最近、人生を生きていて感じるストレスの8割くらいは電話に由来する、そのくらいいきなり電話をかけられるのは迷惑だし、ストレスフルだ。

FineGraphics/写真AC

昭和と令和の「電話」への感覚

昭和も令和もどちらも電話が存在している。だが、電話への感覚は時代によってあまりにも違いすぎる。

昭和時代、遠方に住む人との連絡手段は電話だった。メールはない。携帯もない。手紙も時間がかかる。電話を代替する遠隔通信手段はなかった。

しかし、今は令和だ。時代は大きく変わった。この記事を読んでいるあなたに問いたい。あなたが手に持っているスマホのバッテリーは、「電話」という機能に対してどのくらい使用率があるだろうか?頻繁に電話をする営業マンでなければ、10%以下なのは間違いないだろう。筆者はなんて1%もないと思う。人ととのコミュニケーション手段はLineやFacebookのDM、Eメールだろう。そう、携帯「電話」とは名ばかりで「電話」としての役割はほぼない。

マナー講師には、この時代の変化についてアップデートする必要性を布教してもらいたいと心から願う。

電話でのコミュニケーションは難しい

「電話は気楽に使える。伝わりやすい」と勘違いしている人がいる。だが、そんなことはない。電話によるコミュニケーションは難しいんだ。

特にビジネスコミュニケーションにおいて、電話はメールなどより遥かに難易度が高い。「自分はこれを伝えたい。相手のこういう部分の意図を知りたい」というやり取りを音声でするわけだが、その実電話というのは即興のプレゼンテーションと同じだ。プレゼンテーションをするには伝えたいテーマに集中し、些末な情報を削ぎ落とし、相手に届けるスキルのことだ。準備なくいきなりかかってきた電話でそれを期待できるのは、よほど話しなれた人にしかムリだろう。

「書くの面倒だから電話しちゃったw」と、気軽に電話してくる「自称おしゃべり好き」な人と話すと「句読点」が存在しないことに気づく。ひたすら「。」までが長い。そして余計な情報が多すぎ、テーマがあっちこっち移動するので、集中して話を聞いても、相手が何を言いたいのかサッパリ分からないことがある。ストレスマッハで黒髪が白髪になりそう…。

円滑な電話コミュニケーションが実現できるのは、言語の運用スキルが高い人だけだ。「メールで伝える自信がないから電話」という人は勘違いしている。文章を推敲できるメールでできないことを、電話でできるわけがないのよ。

電話をかけていい人、ダメな人

でも電話をかけていい人はいる。それは時給がメチャメチャ高い人だ。

時給が高い人、たとえば高額所得者は時間が命だ。1秒でも早く相手に意図を伝える、という場面においてはメールより電話が早いことがある。その場合は、秘書や部下に指示を出す場合においては、電話の使用は認められる経済的合理性が存在する。けど、その逆はあってはならない。アルバイト社員が、社長に電話をかけて大変高額な社長の時間を使ってはいけないということだ。

だが、多くの場合は対等な関係であることが多い。取引先との打ち合わせなどは、電話の打ち合わせの必要性が生じたら、アポを取ってお互いの都合の良いタイミングで通話をする必然性はあると思う。

電話がダメなのではなく、マナーがダメ

「お前、電話に親を殺されたんか?」と筆者を電話アレルギーと勘違いしないで欲しい。別に電話がダメとはいわない。いきなりアポ無しで電話をかけることと、内容的に電話ではなくテキストでやり取りすべきシーンで電話をすることが嫌なだけだ。他愛もないおしゃべりの電話は別に嫌いじゃないよw

このように電話マナーは昭和と大きく違っている。そして、年配の方ほどテキストメッセージではなく、いきなり電話をかけてしまいがちだ。これは彼らがマナーのアップデート通知を受けていないのが原因だ。だからこそ、マナー講師の方々にはこの布教を頑張っていただくことで、日本における労働生産性向上につなげて頂ければ世の中はもっと生きやすくなると思う。ぜひともオナシャス!

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。