コロナ対応に尽力されている西村経済再生担当大臣が、今年3月に「選択する未来2.0」という有識者懇談会を立ち上げ、10回に渡る議論を重ね、7月1日に中間報告書がとりまとめられました。今後、経済財政運営の指針である「骨太の方針」への反映に向け、経済財政諮問会議に報告される予定です。
その中間報告書の中で、僕たちが訴えている、男性育休の義務化が提案されました!!
世の中の性別役割分担意識を変える取組として、育児休業の分割取得を更に柔軟化し、テレワークと組み合わせつつ、家族の態様に応じ男女協力して子育てを行う多様な形を示していくこと、また、象徴的な取組として男性本人に対し、育児休業の取得の義務化や強力なインセンティブを与え、男性が全員取得する環境を目指すことも提案したい。
(『選択する未来2.0中間報告』p.22より)
男性の育休取得率はたったの6%
過去10年間の育休取得率は、女性は8割台で推移している一方、男性は2%から6%に微増しているのみ※1。今年5月に内閣府が公表した「少子化社会対策大綱」では、男性育休取得率の目標を2025年で30%としていますが※2
三菱UFJリサーチ&コンサルティング社が行った「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」(労働者調査)※3によると、男性が会社に育休制度があるのに利用しなかった理由について、
1位 業務が繁忙で職場の人手が不足していた(38.5%)
2位 職場が育児休業を取得しづらい雰囲気だった(33.7%)
3位 自分にしかできない仕事や担当している仕事があった(22.1%)
となっています。
制度があるのに、職場は休みにくい雰囲気で、周りに遠慮して育休を取得したいのにできない男性の姿が垣間見えます。
コロナショックの今こそ男性育休を一気に推し進めるべき
今、長年進まなかった男性育休を一気に推し進めるチャンスです!
「コロナショックで経済社会が大変なときに男性育休の議論?」と思われた、そこのあなた。いや、むしろ今こそ進めるべきなんです。
コロナショックは、確かに経済社会に大きな打撃を与えましたが、一方で、人々の家族や仕事、働き方に関するこれまでの価値観を大きく変えつつあります。
無理だと思っていたテレワークやオンライン会議もやってみたら意外と大丈夫だったという人、多いんじゃないでしょうか?
内閣府がインターネット調査により5月25日~6月5日に実施した「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」※4によると、
・感染症拡大を防止するため、就業者の3分の1強がテレワークを経験し、
・東京23区では5割超の人の通勤時間が減少し、その7割超が今後も減少した通勤時間を保ちたいと考えていて、
・子育て世帯の3分の1強が感染症拡大前より夫婦間の家事分担を工夫するようになり、その約95%が今後も工夫すると思っている
とのこと。
こんなに日本人の意識と行動が変わったことは近年ないでしょう。コロナは腹立たしいことこの上ないですが、こうしたかつてない変化を我々にもたらしたことは、否定しようがありません。
西村大臣の思いは、コロナショックによる、この意識と行動の変化を変革のチャンスとし、長年指摘されながらも解決が進まなかった課題にこの数年で一気に取り組み、望ましい未来を選択することだそう。
中間報告では、男女がともにワークライフバランスを実現できる社会を目指すために、長年進まなかった課題(低い男性育休取得率や女性正規労働者比率、待機児童問題など)に取り組むことが提案されています。
中間報告書の「おわりに」の中で、政府の有識者懇談会にしてはかなり熱い想いが書かれていたので引用します。
コロナショックの下、社会変革を進めていく機運が高まっている。この機会を逃せば、次の機会はもうないと考えるべきだ。一方、「喉元を過ぎれば熱さを忘れる」「形状記憶合金」と言われるように、すでに元に戻り始めているとの懸念も生じている。
こうした懸念を払拭し、変化を後戻りさせることがないよう、できることは直ちに着手する。 時間を要する課題についても5年以内に集中的に取り組むべきである。そのための実行計画を今後半年で作成し、必要な法案は来年の通常国会に提出する必要がある。本報告のメッセージが経済財政諮問会議での議論や骨太方針2020に反映されることを求めたい。
男性育休取得が当たり前の世の中に!
この熱い想いが冷めないうちに、日本人の意識が後戻りする前に、男性育休取得100%に向けた取り組みを一気に進めましょう!
そして、男性育休取得が当たり前の世の中にしましょう。
今の子どもたちが大人になったとき、「昔は男が育休取るの一苦労だったらしいよ」と笑って話せているように。
政治家のみなさん、よろしくお願いします!
※1 厚生労働省 雇用環境・均等局 職業生活両立課「男性の育児休業の取得状況と取得促進のための取組について」(令和元年7月3日)のp.2
※2 内閣府「少子化社会対策大綱」(2020年5月29日)別添2 施策に関する数値目標
※3「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」(労働者調査)のp.20
※4 内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月21日)
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2020年7月8日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。