日本の不動産は下がるという「誤り」上がるという「幻想」

日本では、不動産価格は新築で建てられた時が1番高く、そこから建物が劣化していき、価格が下落していくというのが常識です。

(日本経済新聞から)

(日本経済新聞から)

しかし、日本経済新聞に掲載された、過去10年の首都圏のマンションの価格を見ると、都心部の物件は、値下がりどころかむしろ値上がりしていると言う結果になっています(図表も同紙から)。首都圏の515駅のうち、発売時の価格を上回ったのは157駅と3割以上になっています。全体の平均でもマイナス5.7%と、若干価格が下がっている程度に過ぎないことがわかります。

確かに不動産は、経年とともに建物価値が下落していきます。しかし、価格を決定するのは建物よりも、むしろ土地の価値になります。これは都心部になればなるほど顕著な傾向です。

時間とともに価格が上昇するのか、それとも価格が下落するのかは、土地の価格動向次第ということです。不動産価格が下がるというのは「誤り」ですが、上がると期待するのも「幻想」なのです。

不動産の場合、お金を借りて購入する人がほとんどなので、マーケットの金利情勢、そして金融機関の融資姿勢が大きく影響します。

投資物件に関しては、賃貸によって得られるネットの家賃収入と、物件の価格の下落のどちらが大きいかによって、投資のリターンが決まります。

現状では、都心の不動産物件であれば、賃貸利回りと借り入れ金利の差は、3%程度あります。つまり、物件価格が年間3%以内の下落に留まれば、トータルのリターンがプラスになることを意味します。

単純計算では、10年で考えて30%以下の値下がりなら、損はしない。もしそう考えるなら、リスクを取って投資をするのが合理的ということになります。不動産価格が下落したとしても、投資で収益が上がるということに、多くの投資家は気が付いていません。

不動産投資とは、時間とともに損益分岐点が下がっていく特性があります。だから、短期ではなく長期で保有すれば、極めて負けにくい投資と言えるのです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

アバター画像
資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。