アメリカ大統領はまた繰り返してしまうのか!

新型コロナウイルスの感染拡大以来、トランプ大統領はWHOを中国寄りだとたびたび批判してきました。そして4月には資金拠出の停止を表明し、今月6日になって正式に脱退を通告しました。
これによりアメリカは、1年後の来年7月6日に脱退することになりそうです。

これについて私が思うこと、二つあります。一つは極めて目先の観点から、もう一つは、長い歴史の観点からです。まず目先の観点については、11月に行われるアメリカ大統領選挙でトランプ大統領が勝つための方針だということです。

アメリカの新型コロナウイルスの感染者数は昨日7月8日までに305万人を超えて世界一です。民主党はじめとして、国民の間にも、トランプ大統領の責任を問う声は多くあります。自分の責任が問われることになれば、トランプ大統領としてはその責任を中国に求めるということです。

私も確かに中国には責任があると思います。中国は当初、新型コロナウイルスが人から人への感染事実を世界に対して速やかに情報公開をしなかったからです。また、WHOのテドロス事務局長は、「中国はよくやっている」などの発言もありました。しかし、WHOの中国寄りはあってはならないことですから、それは加盟各国で組織を正していくことが必要です。

続いて、歴史的な観点についてです。この脱退が、トランプ大統領の個人的なキャラクターや大統領選挙ということだけではなくて、アメリカ国内で孤立主義が再拡大しているという見方です。アメリカの孤立主義は時々、モンロー主義と言われます。

これは1817年に第5代アメリカ大統領に就任したジェームス・モンローが、当時争いが絶えなかったヨーロッパに干渉しない一方で、アメリカは権益を拡大してきました。いわば、国際的には中立のスタンスで自国繁栄を第一にした主義です。1898年4月、キューバをめぐって起こったアメリカとスペインの戦争でアメリカが勝ち、キューバをアメリカの保護国にして領土を拡大します。

その後、ヨーロッパでは争いが絶えずに起こり、第1次世界大戦に発展します。第1次世界大戦が終わってから孤立主義は、第28代アメリカ大統領のウッドロウ・ウィルソンが世界に呼びかけて、国際連盟を設立し、方向転換がなされました。ところが、この方向転換を良しとしない議会は、共和党が多数を占める上院で強硬な反対にあい、非加盟に終わりました。アメリカが呼びかけたにもかかわらず、アメリカは国際連盟に入りませんでした。その後は、第二次世界大戦となり、今に至るまで、アメリカが唯一のスーパーパワー (超大国)として世界に君臨しています。

再び今を考えてみると、トランプ大統領は「America first and only America first」と言って、自国中心主義をやってきました。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、パリ協定(地球温暖化対策の国際的枠組み)からの離脱、イラン核合意からの離脱、米露中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱などがありました。

しかし今、誰がアメリカの大統領に就任しても、経済力だけではなくて、アメリカが世界のスーパーパワーでなくなってきているのは事実です。中国が台頭してきたという言い方もできますけれども、それは自然なことではありません。中国には明確に世界のナンバーワンになって世界を中国中心に回していこうという野望、覇権主義があります。

ですから、今やアメリカは経済力を背景に軍事力を持ってスーパーパワーとして世界を押さえつけるという姿ではなくなりつつあります。先ほどの歴史にもう一度戻ります。国際協調主義のウィルソンの次に大統領に選ばれたのは、また孤立主義のウォレン・ハーディングでした。その後、世界大恐慌や第2次世界大戦がありました。

長年政治に携わってきてた私は、何度も「歴史は繰り返す。だからこそ歴史に学べ」と聞きました。

アメリカがどうであれ、日本はアメリカに頼って生きていくことはありえません。
我々は日本人です。
日本の政治と共に生きていかなければなりません。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。