日本人のコロナ対応を混乱させる「GO TO トラベル」

内藤 忍

「Go To トラベル」(リンク先は国土交通省のPDF)という国内の旅行需要振興策が開始されるようです。これは国土交通省の主導で、国内旅行を対象として宿泊・日帰り旅行代金の半額を補助する仕組みです。

補助額は、最大で1人あたり1泊2万円までになり、利用回数の制限はありません。補助のうち7割は、旅行代金の割引になります。そして、残り3割は旅行先で使える地域共通クーポンで配るとされています。

例えば、1泊5万円の旅行であれば、補助額は半額が25,000円ですから、補助額は上限の2万円となり、このうち旅行代金の割引は1万④千円、クーポンが6千円ということになります。7月22日以降の旅行を対象として、それより前に購入していても対象とするようです。

クーポンの支払いは、準備の関係から9月にずれ込むと報じられていますが、具体的にどういう手続きで受け取るになるのかわかりにくく、クーポン支給前に旅行に行くと現地で使うことができない可能性があるようです。

半額で旅行に行けるというのは、自粛疲れしている日本人にとっては極めて魅力的と思われ、今後旅行需要は爆発するのではないかと思われます。

しかし、多くの日本人は今回の「Go To トラベル」をナゼ今始めるのか理解できず、混乱しているのではないでしょうか。

(西村大臣 go to 記者会見 NHKニュースより:編集部)

記者会見する西村経済再生相(NHKニュースより:編集部)

西村経済財政・再生担当大臣は、東京・神奈川・千葉・埼玉の首都圏での新型コロナウイルス感染者が増加していることに対し、休業要請の検討を含め、警戒すべきとの見方を示しています。

また、首都圏の大学の中には、9月から開始予定だったキャンパスでの授業を再延期する動きも出ています。東京の新規感染者数が連日200人前後で推移していることから、外出を控えるという人も多いのではないでしょうか。

果たして、お得なキャンペーンを利用し、日本中を旅行して、観光の振興に貢献した方が良いのか?それとも、首都圏をはじめとする新規感染者数拡大に配慮し、できるだけ県外移動は控えた方が良いのか。

個人的には、コロナウイルスに過剰な自粛をするよりは、医療施設の状況を注視しつつ経済活動を行っていくのが良いと考えていますが、東京から大量の旅行者が地方に出かけ、感染が全国で拡大した場合、どうするのか?

国土交通省と経済再生担当大臣の真逆のコロナ対策。アクセルとブレーキを一緒に踏むようなチグハグな対応は、日本政府のコロナ感染対策の戦略の欠如の象徴のように感じます。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年7月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。