安楽死事件:逮捕された医師の妻は元代議士、ブログで激怒。政界も反応

在宅治療中のALS患者の女性からの依頼で、薬物を投与して死なせたとして、京都府警が23日、2人の医師を嘱託殺人容疑で逮捕した事件は、永田町・霞が関にも波紋を広げた。逮捕されたうちの1人で、宮城県名取市の開業医、大久保愉一容疑者は元厚労省技官だった。

大久保容疑者(クリニックHP)と、妻で元衆議院議員の三代氏(ブログ)

さらに大久保容疑者の妻は、元衆議院議員の三代(みよ)氏。三代氏はこの日午後から公式ブログに5本の記事を連続投稿。1本目の「夫愉一に関する報道につきましてご報告」と題した記事では、

私は詳細も全容も、一切知らされておりません。夫からも何も聞いておりません。

としながらも

夫が一人の医療者としてやったことの結果ですから一人の大人としてきちんと受け止め、全責任を一人で背負って当然だと考えております。

との見解を示した。続けて「バカにつける薬はない」と題したブログでは、愉一容疑者に対する不満を炸裂。妊娠中だった国会議員時代、切迫早産のリスクを抱えた中で、難病患者支援の法制化に関する会議に出席した際、愉一容疑者が付き添ったエピソードに触れた上で、

私と次女の命を懸けた難病PT出席に付き添ったのは一体なんだったのかと、涙も出ません。思いを共有してたわけではなく、うるさいから付き添っただけだったんだなー。ただただ脱力。

と失望した心境をつづり、さらに夫が厚労省を退職するときにも反対したことにも言及。事件については、

安楽死の判断や解釈を決めるのは、国会であり臨床現場ではありません。現行の法制度がおかしいと思うなら、まず選挙に受かって、国会で議論しろや!!!あなたが選挙に出たいといえば、全力で支えたのに。なんだよ。

と絶叫調で怒りをぶちまけた。三代氏は2012年衆院選に自民党公認で宮城5区から出馬し、比例復活で初当選。しかし、2期目をかけた2014年選挙は出馬しなかった。当時、一時期、政界引退を示唆しては取り消すなど不可解な言動があったが、ブログでは、

あなたが次女のおむつ替えやミルクを、議員宿舎でやってれば、私が厚生労働委員会で、働き続けられたのに。あなたの思いを、国会でぶつけたのに。

「俺の晩飯は?子どもの世話は妻の役目でしょ母親失格だね~」

と議席から引きずり降ろしておいて、何が法制度の矛盾だよ。

などと夫が家事育児に非協力的だったことが議員活動を断念した原因だったと主張した。

ブログによると、三代氏はきょう午前11時から記者会見を開く予定という。

ネット上では、三代氏に同情する人もいたが、

自分のことを言ってるのかと思った。人が死んでるのに自分のことばかり。

いきなり場外乱闘の予感

などと冷ややかに見る向きもあった。

安楽死を巡っては、スイスやベルギー、カナダなどでは合法化されたのに対し、日本では1995年に東海大病院事件の横浜地裁判決で、「積極的安楽死」が認められるケースとして下記の4要件を挙げてはいる(参照:京都新聞)。

  1. 患者の耐えがたい肉体的苦痛
  2. 生命の短縮を承諾する患者の明確な意思表示
  3. 死が避けられず死期が迫っている
  4. 苦痛の除去などのため方法を尽くし、他に代替手段がない

しかし、その後も法制化についてはは実質棚上げされたままになっている。今回のケースでは逮捕された2人の医師は女性の主治医ではなく、要件に当てはまるかは疑問を持つ向きは多い。

日本維新の会の松井一郎代表は事件報道直後にツイッターで言及し、自党の議員に対し、

非常に難しい問題ですが、尊厳死について真正面から受け止め国会で議論しましょう。

と、この問題に取り組む姿勢を示していた。

これに対し、今回の事件の当事者と同じALS患者でもある、れいわ新選組の舩後靖彦参議院議員は安楽死の法制化には慎重な立場を示した。舩後氏は自らの公式サイトで声明文をアップ

報道を受け、インターネット上などで、「自分だったら同じように考える」「安楽死を法的に認めて欲しい」「苦しみながら生かされるのは本当につらいと思う」というような反応が出ていますが、人工呼吸器をつけ、ALSという進行性難病とともに生きている当事者の立場から、強い懸念を抱いております。

などと懸念を示した上で、

「死ぬ権利」よりも、「生きる権利」を守る社会にしていくことが、何よりも大切です。どんなに障害が重くても、重篤な病でも、自らの人生を生きたいと思える社会をつくることが、ALSの国会議員としての私の使命と確信しています。

と決意を示していた。