私はちょうどひと月前にALS患者として安楽死に対する見解を述べました。
世界 ALSデーに寄せて【 ALSの正体2】〜『死ぬ権利』より『生きる権利』が先でしょ‼️
ALS関係者の方々の中でも安楽死肯定派と否定派がいるのは事実です。実際のところ、ALS患者の7割が人工呼吸器をつけずにあの世に旅立っている現状があります。
もちろん当事者の意思に他人が口を出す問題ではないし、どれほどご本人が悩んだ末の決断なのかは同じALS患者として察するものはあります。
だから私は情報発信を続けています。偏った情報だけで意思決定して欲しくないからです。情報難民のまま社会から、ある意味で『自殺』に追い込まれて欲しくないからです。
今回の事件の患者様は報道によると、重度訪問介護による24時間の介護体制があり、SNSを通じて医師と知り合ったと言います。正直SNSの世界にはALS患者、ALS関係者の本音が有り有りと語られています。安楽死肯定派の話も否定派の話も当然出てきます。
でも本件の患者様は私のようなALSでも幸せだと言っている人の話を見てくれたのでしょうか?実行した2人の医師はALSでも人工呼吸器をつけても、やりたいことをやって生きている患者が全国にいることを本当に理解した上で実行したのでしょうか?安楽死の是非以前に私が気になる点はそこです。
SNSは凶器にもなるし防具にもなります。凶器と本人が思い込んだら防具の部分はスルーされてしまいます。ALS患者が人工呼吸器をつけて生きることを『楽』だとは、私も口が裂けても言えません。でも私は先輩患者から沢山の防具を受け取って、大勢の方々に支えられて今の生活基盤を整えました。
本件をきっかけに安楽死の是非の議論ではなく、まずはALSという病気の本質ひいては障害者というものの本質の理解に話が進むことを切に願います。
本件の患者様のご冥福を心よりお祈りいたします。
この記事は、株式会社まんまる笑店代表取締役社長、恩田聖敬氏(岐阜フットボールクラブ元社長)のブログ「ALSと共に生きる恩田聖敬のブログ」2020年7月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。