台湾の李登輝元総統が31日、亡くなった。97歳。副総統時代の1988年に前任者の死去により昇格。中華民国の台湾亡命以来、40年近かった当時、日本の国会にあたる立法委員会は一度も改選されていなかったが、民主化の世論のうねりにあって、総統を国民が直接選出する選挙制度を導入。1996年、制度導入後、初の選挙でも再選し、民主化に尽力した。総統退任後は台湾独立論者として、台湾や近隣諸国に大きな影響力を保持していた。
現任の蔡英文総統はツイッターに投稿し、「李元総統は台湾の人々とともに歴史的挑戦を幾度も乗り越えてきました。台湾に民主自由を残し、今後も私達を勇気づけてくれることでしょう。李元総統の遺志を継ぎ「台湾に生まれた幸福」を追求し続けます。」とコメント。日本語で日本国民にも悲しみを共有するあたりは、李元総統の死去が東アジアの政情に与える影響の大きさを示唆しているともいえそうだ。
李元総統は、日本統治下時代の戦前には、現在の京都大学で学び、親日家として親しまれた。その訃報に日本のネットでも惜しむ声が広がった。
台湾との外交活動に精力的だった政治家たちからは、生前の李元総統の人物の大きさに圧倒された思い出を次々に語った。
自民党の長島昭久衆議院議員は、「7年前、ご自宅にお招きいただき3時間半にわたり直接ご指導賜った夢のようなひと時は、忘れ得ぬ思い出です。台湾民主化の父であり、終始日本国民を鼓舞してくださった李登輝先生に感謝と哀悼の誠を捧げます。」と悼んだ。
片山さつき参議院議員は、「台湾の皆様の喪失感は計り知れないかと心より深くお悔やみ申し上げます。でも民主主義は死にません」と力強く結んだ。片山氏は台湾出身者の日本での免許証などの本籍地を中国から台湾にすべきと提言したことがある(参照:片山氏ブログ)。
野党からは、生前の李前総統を「尊敬する政治家」に挙げていた立憲民主党の枝野幸男代表が「「尊敬する政治家は誰ですか?」と良く聞かれますが、直接お目にかかった先輩の中では迷うことなく李登輝先生です。」と改めてコメント。
「軍事独裁的体制を平和的にアジアで最も民主的な体制に移行させた政治力は、20世紀で最も素晴らしい政治家の一人だと思います。生前の先生に何度もお目にかかることができたことは、私の掛け替えのない財産となっています。」などと綴った。
李元総統は2016年、台湾に近い沖縄県石垣市を訪問したばかりだが、石垣市の中山義隆市長は「ご講演を頂いた際は「日本と台湾が手を取り発展して行く未来」を熱く語られました。」と振り返り、「日本も泣いています。李登輝先生ありがとうございました。」と悼んだ。
台湾出身の歌手・版画家、ジュディ・オングさんは「30年前、台湾で初めての版画展を開いた時見に来て下さって、本当に光栄でした。「おっ、これは京都だね。」と中絶えず私に日本語で話しかけ、新聞記者たちを困惑させていた事思い出します。ユーモラスでダンディな李総統、安らかにお眠りください。合掌」と故人を偲んだ。