セブンイレブンのアメリカコンビニ買収に思うこと

岡本 裕明

セブンイレブンがアメリカの大手コンビニ「スピードウェイ」買収に再チャレンジし、入札に競い勝ったと報じられています。よかったと思いますが、セブンイレブンの社内体質が改善された上で攻めの姿勢に転じたのか、そこが注目点だと思います。

(Thomas:shibainu/flickr)

(Thomas:shibainu/flickr)

ご記憶にある方も多いと思いますが、この話は今年の2月に一部で報じられ、交渉が進められましたが破談となった経緯があります。3月7日の私のブログには「個人的にはセブンのスピードウェイ買収は進めるべきだったと思っています。そこを抜ければかなりシェアで優位に立つほか、セブン流のコンビニビジネスを全米展開できたはずです。北米のセブンは日本に比べれていまだに遅れています。店づくりが楽しくなく、ガソリン入れたついでにうまくないコーヒー買うか、というイメージです。改良の余地は大いにありです」とあります。

これに対してセブンは失敗してよかったという声が多くありました。特に買収金額に無理があるというコメントがありました。私は気になりませんでした。理由は日本の企業買収物価水準は申し訳ないぐらい遅れており、買収価格は唖然とするぐらい高くなっていることについてこられなくなっているのです。

例えば武田薬品の7兆円のシャイアー買収、2018年買収後、相乗効果に対して資産売却を進め、決算では明らかに買収効果が見えてきています。企業買収のだいご味とはここにあるのですが、会社のランクを1つも2つも引き上げるには今の時代、買収が最善最速の手法であり、それをうまくこなせば圧倒的地位を得られることは多くの事例が証明しています。

私が武田のシャイアー買収は問題なくうまくできると考えていたのは同社の役員がトップを含め、ほぼ非日本人であり、企業経営の思想がまるで違う点において地球儀ベースの企業としてのうまさを期待していました。同様の地球儀ベース経営をしているのがJT(日本たばこ)とソフトバンクでしょうか?とにかく幹部が多国籍化し、日本の会社とは思えない展開をしています。

一方、日本的経営を取り込みながら買収上手で名をはせているのが日本電産とミネベアミツミでしょうか?ミネベアミツミは東の日本電産と異名がある程で、ミネベアの名を世に知らしめた高橋高見氏は同社の創業者というより日本にM&Aで勝負を挑んだ最初の人物と言ってよいでしょう。株式をやっている人にはバブルの頃、彼の名前がよく出てきたので覚えている方もいらっしゃるかもしれません。あの三協精機買収失敗事件でその後、ライバルの日本電産が買収したという顛末があります。

さて、セブンイレブン、今回の買収は買収側にとってはコロナで競争相手がそこまで激しい競争を求めなかったことが幸いしました。私もコロナの今が構造的変換ができる絶好のチャンスと何度か申し上げたと思いますが、肉食系にとっては堪えられないほど最高のタイミングなのであります。

言っていることがわからないと思う方は4-6月の日本企業の決算状況をご確認いただければよいと思いますが、大きく売り上げを下げたところと利益倍増とか売り上げ5割増しといったコロナ太りしている企業決算と完全二分化しています。悪いところばかり見ていると本当にあるべきストーリーを見落とすのです。

ただ、私はセブンイレブンの今回の買収がどうなるかはセブンの体質次第だと思っています。この1-2年のセブンの数々の失敗話を総合すると鈴木体制の余韻と自分たちの経営スタイルの模索でもがいたとみています。スピードウェイの買収に本気のチカラを出すなら国内で飽和化したコンビニ事業の軸足を北米に動かすというぐらいの心構えが必要です。同社がアジア企業ではなく、地球儀企業となり、役員の2/3が外国人になる程の大変革を遂げられたら同社は北米の制覇だけではなく、国内のコンビニで最後の勝ち組になれるチャンスすらあります。

ファミマが苦し紛れの親会社、伊藤忠による買収となりました。伸びしろがない日本のコンビニ業界は圧倒的変革が必要で無人店舗化と提供するサービスを今の半分ぐらい入れ替える必要があると思います。個人的にはアマゾンと組むぐらいのあっと驚く展開もアリだと思います。

今回の買収、成功するも失敗するもセブン次第。日本企業を応援するものとしてはせっかくのチャンスですから是非とも大成功を収めてもらいたいと思っております。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年8月3日の記事より転載させていただきました。