吉村大阪府知事と大阪府立病院機構は4日、共同会見を開き、ポビドンヨードうがい薬の新型コロナ予防効果について発表しました。
(参考)うがい薬で重症化予防? 新型コロナ、大阪府など研究 ― 日本経済新聞(2020年8月4日)
本件に対してネット上では賛否両論が巻き起こり、ポビドンヨードうがい薬の大手メーカーである明治HDの株価は急騰しています。
大きな話題となった本件ですが、実は一部の歯科医院では下記の論文を参考にして、同様の対策を4月より行っていました。
(参考)Transmission routes of COVID-19 in the dental practice – British Dental Journal(2020年3月3日)
1. 大阪府の研究発表は従来からの新型コロナ対策の裏付けとなりうる
ここでは新型コロナウィルスが唾液中に分泌されるため、院内感染予防として1%過酸化水素か、0.2%ポビドンヨードの術前うがいが有効だろうと指摘しています。
この論文は2002年に起こったSARS感染症と対比して書かれた論文で、特に統計学的な解析がされているわけではありません。とはいえ、科学雑誌Nature系列の有力な医学誌に掲載した情報として、参考にした歯科医院も多かっただろうと思われます。
大阪府の発表は、以前から感染拡大防止に有効だろうとされていたポビドンヨードでのうがいに関して、統計学的な裏付けを与える可能性が高いと考えることができます。
2. 唾液中のウィルスが減少する効果
発表では1日4回のポビドンヨードでのうがいによって唾液中の新型コロナウィルスが減少したとありました。
歯科医院での院内感染も、市中でのエアロゾル感染も唾液中のウィルスというのは大きな要素です。ポビドンヨードによる感染拡大防止効果は大いにありうるだろうと思います。
一方で、唾液中のウィルスは体内より排出されたものなので、新型コロナ感染症を発症している患者がポビドンヨードでうがいをしても、重症化する確率が下がる可能性は低いかもしれません。
以上から、例えば重症化リスクの高い高齢者施設で新型コロナ感染症の発症者が現れた場合、高齢者同士での施設内感染拡大防止策として、ポビドンヨードでの1日4回のうがいを活用できる可能性はあるでしょう。
また、現在高齢者施設での面会は厳しく制限されている場合が多いですが、ここでも面会希望者に対し、入場前にポビドンヨードでのうがいをすることで、感染するリスクを低下させる可能性があるかもしれません。
3. 野外活動での熱中症対策にできないか
また唾液中のウイルスが減少するということは、マスクでのエアロゾル拡散防止の代替法となる可能性があります。
既に梅雨明けし夏が始まっておりますが、この環境の中でマスクをつけることは、熱中症のリスクを高めています。特に小さい子供や、高齢者が外出するときは、十分に気をつけなければなりません。
ポビドンヨードでの唾液内のウィルス減少をマスク装着の代替とすれば、この夏熱中症での事故を予防できるかもしれません。
まとめ
このようにポビドンヨードでのうがいは有効である可能性は高く、今後の大阪府からの研究発表が待たれます。
一方で副作用も多くあります。
一つはアレルギーのリスクが比較的高いこと。
もう一つは甲状腺に関する疾患を持つ方は、使用を控えたほうが良いということです。
これらの注意点を守れば、ポビドンヨードは比較的安全で、一般的に使用されているうがい薬です。あまり極端にやりすぎて喉の粘膜を傷つけないよう、ほどほどに実施するのはありだろうと考えています。