こんにちは、広島市議会議員(安佐南区、自由民主党)・むくぎ太一(椋木太一)です。
広島は8月6日、原爆投下から75年の節目を迎えました。広島市議会議員として広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式(以下、平和記念式典)に参列させていただき、犠牲者の御霊に哀悼の意を捧げ、恒久平和を祈願して参りました。
原爆投下後、「75年は草木も生えない」と言われていた広島は、先人の不断のご努力により復興を果たしました。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、参列者の人数を例年の1割程度に抑えるなど、式典の規模を縮小して開催しましたが、式典の日を迎えられたことに感謝いたします。
ただ、今年もまた、左派デモ団体による騒音が式典会場に響きました。先日、広島市とデモ団体との取り決めについて述べました(「アベ、帰れ」から1年…あすの原爆忌75年は静寂を取り戻せるか?」)。拡声器から10メートル離れた地点で「85デシベル」以下でデモを行うというものですが、この取り決めは破られたといっていい状況となりました。
少し詳しくお伝えします。平和記念式典は午前8時に始まりました。そして、原爆が投下された午前8時15分に1分間、黙とうしたのに続き、松井一実・広島市長が平和宣言を読み上げました。この時、セミの声とは違う「雑音」が東の方角から響いてきたのです。さらに、午前8時30分頃に安倍晋三総理があいさつに立つと、この「雑音」は拡声器を
使った声だと認識できるまでに大きくなりました。
私の席は式典会場の最も西側でデモのルートから離れていたことや木々が近くてセミの声が大きかったこともあり、「雑音」の内容までは聞き取れなかったのですが、他の参列者や関係者、デモの動画によると、「アベ帰れ」と連呼していました。
「85デシベル」とは、走行中の電車内やパチンコ店内の騒音をイメージしてください。今年のデモの騒音の測定値はまだ出ていませんが、参列者の多くが拡声器の声だと認識している時点で、「静謐な環境」を確保できているとは到底言えません。
ここでいう「静謐な環境」とは、ただ単に、物理的に音が静かという状態を示しているわけではありません。8月6日早朝から、少なくとも、平和記念式典が執り行われる午前9時頃までは政治的なアピール行動は休止して、精神的にも静かに犠牲者を慰霊しましょうという意味を含んでいるのです。
この日、左派デモ団体のメンバーは早朝から原爆ドーム前に参集してきました。広島市が作った、「拡声器の使用は控えてくださいという」パネルもなんのそので、参加者の大学生は教授の人選に異議を唱える演説をしていました。沖縄からの来広者は辺野古地区への基地移転反対を力説していました。聴衆のビブスやのぼりには「天皇制粉砕」という文字も見えます。
平和記念式典の目的は、原爆犠牲者を悼むということに尽きます。沖縄の基地問題や皇室等が犠牲者の追悼にどう関係するのか、はなはだ疑問で仕方がありません。このように、平和記念式典の場を宣伝に利用する狙いがありありと見えるからこそ、多くの広島市民、国民の皆様が反発しているのです。
式典中の騒音問題について、広島は当初、条例で規制することを視野に入れていました。つまり、今回の音量の取り決めはあくまで妥協の産物として提示したわけです。ボールはデモ団体に投げられていながら、昨年までと変わらない状態にした以上、平和記念式典に本当の意味での「静謐な環境」を取り戻すため、広島市が条例での規制に本腰を入れる時が来たということになります。