ここ数十年で、冬に新型コロナ並みに死者が増えた例

藤川 賢治

新型コロナを未曾有の災害だと錯覚してしまう理由の一つに、これまでも世界各国で、冬になると新型コロナ並みに死者が増えることはあったという事実を知らないことがあると思われます。

結論のグラフを出すとこうなります(2020年8月10日現在)。各国における今回の新型コロナの死者数が、過去に比べて突出して多いわけでは無いことがわかります。

この情報を知って調べた経緯を説明します。きっかけはドイツ人の Zack F さんのツイートが回ってきたことでした。

1980年から2020年までの月ごとの死者数をグラフ化し、新型コロナの影響のある月を、「インフルエンザ流行シーズンみたいなものだ」とするコメントを紹介しています。

スレッドを追うと、新型コロナ並みに人が亡くなっている月は、過去40年の範囲で見れば各国で幾つか見つかるというのです。100年前のスペイン風邪の例を出すまでもありません。

ただ Zack F さんのグラフだと、連続月でどうなっているのか、前年と比べてどのくらい違うのかがが分からないので、データを元にグラフを描くプログラムを自作することにしました。 本人に元データの在りかを尋ねると心よく教えてくれました。SNS 凄い! (今更)。 データ元サイトは、国連のデータベースから各国の人口推移や死者などの統計情報を公開しているようです。

まずは比較のため、いつも書いてるスウェーデンの2020年死者推移を月ごとに変換し前年と比較した図を載せます。

プログラムに各国の死者データを引数として与えると、10月から4月にかけての連続月(最大6ヶ月)で前年より死者が極端に多い年を探し出して比較するグラフを描き出します。ついでに各国の人口推移を元に100万人あたりの死者数増も算出します。

どの国も高齢者増による死者の自然増があるので、その影響をどう排除するかで悩んでいたのですが、よく考えたら今回の新型コロナ死者だって影響を受けているはずなので無視することにしました。

生成されたグラフの中から、夏は前年とそれほど変わらなく、かつ冬には今回のコロナ並みの死者増が出ているグラフを抜粋して以下掲載していきます。 この死者増はインフルエンザが影響していると考えられます(所謂インフルエンザ超過死亡数そのものではありません)。

スウェーデン、1988-1989年100万人あたり507人の死者増。季節はズレますが、2019−2020年と動きは似ています。

以下、ヨーロッパの主要国において、過去に死者が急増した例を列挙します。

その他、世界で一番人口あたり新型コロナ死者が多いベルギーでも、過去に新型コロナ並みに死者が急増した例がありました。

米国

そして日本でも。

今回の新型コロナは国によっては特別な対処が必要な世界同時パンデミックで、大事件には違いありません。時期も冬では無いし、短い時期に特定の範囲で長い日数の人口呼吸器を必要とする患者が沢山出たので対処が難しかったということはあります。

しかし過去のデータを調べれば、これまでも冬に同じくらいの死者数の増加があったことが分かります。しかしそのときには話題になっていなかったようです。 (ただし何か災害があったということはあるかもしれません。ご存知でしたらご連絡を。訂正させていただきます)

繰り返しになりますが、これは前年より死者が増えた連続月を抜粋したものであり、高齢者人口増による影響もあります。死因が全員インフルエンザということも無いでしょう。ただしそれを言うと、新型コロナの死者数も高齢者人口増による影響も受けているし、死者が少ない前年だってインフルエンザで亡くなった方が相当数いるはずです。

とにかく、冬に新型コロナ並みに死者が増える年はあったという事実が重要です。そのときは騒ぎになっていなかったということが知られていればパニックや過剰対応は緩和されたのではないでしょうか

余談

米国が死者が少なめなのは、データが完全には揃っておらず比較が中途半端なためです。もっと多い年はあるのですが、3年分の連続データが無いと完全なグラフが描けません。

日本では 2010-2011年は前年との差がもっと大きかった年なのですが、3月に震災があったので例からは省きました。震災死者 1万6000人を 3月から差し引いても冬の死者の差は4万1000人、100万人あたりの死者300人以上と多い年になっています。


藤川 賢治 東京都在住パワーリフター、本職はネットワーク系の研究者・技術者