いよいよ香港が、今までの香港ではなくなってきたという事がはっきりしてきました。
7月1日に中国は国家の最高権力機関および立法機関として位置づけられる一院制議会で、日本の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で香港国家安全維持法(国安法)が成立しました。
私はその時、このブログで「香港は死んだ」と言いました。
一昨日、これまで香港で民主活動をしてきた日本でもおなじみの周庭(アグネス・チョウ)氏、そして蘋果日報(ひんかにっぽう:アップルデイリー)創設者、黎智英(ジミー・ライ)氏がその国安法違反の容疑で逮捕されました。法律そのものが言論の自由を奪う内容ですが、この法律に仮に照らしても今回の容疑がはっきりしていないし、もう何でもありという状態だと思います。アップルデイリーは1995年に香港で創刊され、香港第2位の部数を発行する日刊新聞で香港で唯一の民主派支持をしてきた新聞で、中国政府の批判をしてきました。
以前の香港は違いました。
私が最後に香港に行ったのは今から16年前の2004年3月です、当時は香港がイギリスから中国に返還されてから7年目のことで、翌2005年には香港ディズニーランドの開園を間近に控えていました。ディズニーランドそのものがもう自由で夢の国という象徴ですよね。そのような時代に私は香港で金融財務長官ら3人の大臣と会談しました。通訳はいましたがお互い一対一で自由な発言ができました。
この頃は中立系の新聞も異論があるときは当たり前のように批判的な記事を書いていました。当時の資料を見てみると、信報財経新聞(信報:The Hong Kong Economic Journal)という中立系の新聞が、香港の民主化によって独立が煽られるという北京政府の見方に異論を唱えています。「北京が一国を強制する政策は、香港人の香港政府に対する各種の不満を、逆に北京に向かわせる」という記事を書き、行政長官の普通選挙を7割の人が、立法院の普通選挙を75%の人が望んでいるとしています。そして、北京政府は香港の政治制度改革において「寛容で理性的な態度をとるべきである」と批判的な記事を堂々と中立系の新聞が書いました。今はアップルデイリーのみならず、当時は中立系だった新聞も、もう北京の批判はできません。
私が香港に行ったのはさっきも言ったように2004年です。当時は3年後の2007年には行政長官選挙、4年後の2008年には立法会の普通選挙が実施できるかどうかがまさに焦点でした。その後、2007年の全人代で、17年の長官選から普通選挙を容認すると決定されました。ところが普通選挙はいまだ実施されていませんし、現行の制度における立法会選挙、本来であれば9月6日に行われる予定でしたが、7月31日、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に、1年延期を一方的に発表しました。選挙を行うにしても民主派の立候補資格停止ということまでもが画策されていましたので、表向きの理由は新型コロナですけれども、完全に民主派の封じ込めでしょう。
そして、北京で行われていた全人代は昨日が会期末でした。
よって、1年延期の間の議員資格についても全人代で決まりました。
要するに北京が全てを決めるということですね。
もう今は香港に行っても自由な発言はできません。
国家安全維持法は、外国人にも適用されます。
行きたくありませんね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年8月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。