新型コロナウイルスの影響が不動産にも出始めたようです。一番顕著なのは、オフィスです。
土地が余るのも、地価の上昇・下降も全国に先駆けて東京から始まるのが通例です。
特に東京のビジネス5区(千代田区・中央区・港区・渋谷区・新宿区)のオフィス需要に変化が出てきています。7月のこのエリアの空室率(三鬼商事(株)調べ)は6月末で前月比0.33ポイント上昇し1.97%、7月末は前月比0.80ポイント上昇し2.77%でした。空室率はじわりじわりと上昇してましたが、コロナ前までは1.5%近辺を推移していました。
以前にもこのブログで、「今後、オフィスが余ってくるかもしれない」ということを、テレワークが浸透してきた時に言いましたが、その後オフィスが解約され、じわじわとオフィスがあまり始めてきたようです。
特に5区の中でも、スタートアップ企業の多い渋谷区では6月が3.38%、7月が3.85%と、他の4区よりも突き抜けて空室率が高くなっています。スタートアップというと、社員が数人から10数人という規模が多いと思いますが、私の知っている、会計業務を行う100人弱の会社も、やはりオフィスを半分解約しました。また大手の富士通は、今後2年半で全国のオフィスを順次解約して半減させると公表しました。これは決してIT企業に限った話ではなく現場を持っているような会社でも、やはりITでやれる部分のオフィスを削るという動きはこれからも広まると思います。
ちょうど2年ぐらい前から向こう5年ほどの間は、東京都心の新しいオフィスは竣工ラッシュでもあります。ワンフロアが600坪から大きいものになると1000坪というような巨大オフィスがどんどん完成し、しかもその坪単価は高くて4万円ぐらいです。今のところ都心5区の坪当たりの平均賃料は約2万3000円で、直近79ヶ月すなわち6年以上も上昇し続けてきています。
さっき言ったように、これまで都心の空室率が1.5%近辺で低かったのは、一つはコロナショックの前、すなわち経済が回っていたということと、もう一つ、今、新規ビルが供給ラッシュで、その前に建っていたビルの建て替えですから、その人たちが、既存オフィスに入っていたから空室率が低かったこと理由でもあります。今後、新しいオフィスビルが完成すると、そこに引越しが行われますので、既存ビルの空室率が高くなる。したがって、家賃もだんだん下がるということが考えられます。
私最近気になる情報を耳にしました。それは、某大手企業の社員が都心の家を売り地方に引越しをするという話です。しかも1人ではなく、2人です。しかもそのうち1人は茨城に物件も決めたというんです。その理由は、今後テレワークが定着するということが会社の方針として明らかになったことと、都心の家を高い値段のうちに売ってしまおうということです。ですから、今後は住宅地の地価にも影響があるかも知れません。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。