これからの住宅用不動産

先週、東京、新宿区で小さな不動産を購入しました。古家を解体し、木造アパートを建てようと考えています。えっと思われる方も多いと思います。つい少し前まで相続税対策でアパートローンという追い風で建てすぎたアパート問題、そしてコロナもあり、入居率が大幅に下がる中、木造アパートは意外、と思われるでしょう。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

木造アパートもパッケージビジネスをしている業者にお任せするお手軽型で済ませようとすると市場の変化についていけなくなります。家賃保証を提供している業者も一時、叩かれましたが今でも存在します。木造アパートを建てようとする人は小金持ちがその資産運用の一環で手を出すということで、銀行ローンはつく、賃料保証はある、建築関係はお任せとなれば元手だけ払えばあとはジャンジャン賃料が入っているという自動集金マシーンと勘違いしている方がほとんどでありました。

一方、プロは木造アパートに今更、手を出しません。ダサいですからね。賃貸住宅と言えば駅近くにRC造の高層高級賃貸住宅でアメニティも充実したところが最近のトレンドであります。私もそれぐらい知っています。ただ、例えば某ターミナル駅そばの某高級賃貸マンションは愛人や得体のしれない人たちがたくさん住んでおり、住民の質が良くないのです。コンクリートの冷たい建物の向こうは凡人にはわかりにくい世界が存在する、そんな感じです。高級と賃貸の相反する関係が生み出すものがこの結果ということです。

私が今回決めた案件は3年以上も追いかけた物件。なぜか、と言えば立地条件がパーフェクト、だけど誰も手を出さない借地権物件、アクセスには私道があり「掘削通行許可」を私道所有者全員から取り付けるという一般の方にはまず手が出ない物件です。これらを不動産屋と一つひとつ潰していきます。そのため、価格は業者扱いの取引ということもありますが、近隣の所有権と比べて言えないぐらいの価格です。

さて、次に建築ですが、多くの方は〇〇ハウスといったコマーシャル等で名の知れた業者に発注するのだろうと思います。私はゼネコンに20年もいたのでわかっていますが、見栄えはいいけれど高くてフレキシビリティがないのが大手です。スペック住宅に近いから無理が効かないんです。

私はこの手の物件はお抱えの設計士と入念なプランを作り、いつも発注する小さな工務店さんにお願いします。多分、建築費も業者価格ということもあり、有名建築会社の3-5割は安いでしょう。アパートも小銭稼ぎでやるのか、業としてやるのかで全く違ってくるのです。

余談ですが、以前購入したある土地は公簿渡しという条件でした。測量をしないということだったのですが、直感でその土地の大きさは間違っているな、と思っていました。実際、購入後、建築の関係で調べたところ、いわゆる「縄伸び」が起きており、価値で数百万円単位の相違が出ていました。逆のケースもあるので一般には実測ベースでの売買がおすすめです。

さて、なぜ木造アパートかと言えば木造アパートに魅力的な物件がないからです。ドアを開けると四角い間取りでトイレ、シャワーそれにキッチンはコンロが1個口で小さな流し付き。これだけです。夢も希望もあったものじゃありません。住みたくなる間取り。これです。今回私が取り入れるのはワーク/スタディスペース。一人住まいの8畳の部屋でもプライベートと仕事/勉強を区切るのです。

今までリビングとダイニングというコンセプトでした。私は小さい住宅にダイニングなんてもういらないと考えています。つまり、1LDKという発想は終わり、1LKプラスDENであります。ロフトもいいですし、バンクベッド型にして一人住まいなら上をベッド下をクローゼットや仕事/勉強部屋にすることも可能です。バンクベッドを取り入れた物件を一つ運営していますが、外国人に非常に好評なのです。

不動産はトレンドがあるのですが、最近はRC造が主体で高くなってしまいました。木造は安く提供できる点が大きなメリット。そしてフレキシビリティも高いのが何よりです。誰もやらないけれど需要は必ず存在するものと考えればそこそこの展開をするなら全く問題がないと確信しています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年9月7日の記事より転載させていただきました。