立派なオフィスに騙されてはいけない!?

コロナ禍を機に、テレワークや在宅勤務が増えている。

パソナは本社機能を淡路島に移すことを決めた。

写真AC:編集部

ここで浮かび上がってきたのが、「オフィスの存在意義」だ。

オフィスは従業員が仕事をするスペースであると共に、本社ビルなどは「会社の顔」としての機能がある。仕事をするスペースであれば、何も丸の内などの一等地にある必要はない。現に、私が銀行員時代に担当していた世界的工作機械メーカーは(当時と変わらず)大田区にある。

品質で勝負するメーカーや成果で勝負する研究所は、一等地にある必要は全くない。一等地に広い社屋を構えれば、そのコストは必ずユーザーに転嫁される。

かつてワタミの社長だった渡邉美樹氏が、「居酒屋チェーンの本社スペースが一等地にあるのは無駄だ」と断言したと聞いたことがあるが、まさにその通りだ。

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ただし、「会社の顔」としての機能を考えると、とりわけ文系の就活生は一等地にある立派な本社ビルに憧れる。私自身、就活生だったころ、当時本店ビルが威風を放っていた三菱銀行と東京海上に憧れた。双方に内定をもらったのに、就職したのは貧相な本店ビルの長銀というのは、今から考えても実に不可思議だ。

以前、知人の弁護士が一等地のビルの中に豪勢な事務所を構えたので、見学に行ったことがある。以下はその時のやりとりだ。

「ここの家賃を払うのは大変だろう?」

「大丈夫だ。ウチは顧客企業が払ってくれるから」

「???」

「同族企業でなければ、社長や担当者の腹が痛まないから気前よく払ってくれる。顧問料のほか別件があるたびに料金を請求するし、事務所でコピーしたコピー代も請求する」

「自腹が痛まなければ請求書のままに高額な費用を払ってくれるということか?」

「だから、事務所の家賃なんて楽勝で賄える」

その後、私の友人が社長をやっている会社が、顧問弁護士に(書記官に訊ねれば中学生でもできる)簡単な手続を依頼したところ、合計4000万円の支払いを求められたと聞いて腰を抜かした(先の知人の事務所ではない)。友人は、その手続がいかに簡単であるかをまったく知らなかった。

単に不動産の価格が高いというだけという理由だ。

立派な本社ビルや事務所のコストは、ほとんどの場合ユーザーに転嫁されている。

くれぐれも惑わされて余計なお金を払わないことが肝心だ。


編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2020年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。