人々のライフスタイルは、ここ数十年で劇的に変化している。
数十年前の東京都内の様子を書いた書物を読むと、夜は人通りが少なくほとんどの店が閉まっていたそうだ。昼と夜の区別がはっきりしていた時代だ。
ところが、人々のライスタイルはどんどん多様化している。
もともと24時間で交代勤務制だった警察官や看護師だけでなく、学習塾や予備校で働く人たち、24時間営業の店舗で働く人たち、昼夜逆転の生活で執筆活動をしている作家…等々、「昼は働き、夜は眠る」という昔のライフスタイルが当てはまらない人たちが急増した。
夜遅くまで残業をしている霞ヶ関の官僚や、始業時間と就業時間を遅らせている企業で働いている人たちも、「昼は働き、夜は眠る」という昔のライフスタイルからズレている。
選挙カーから出される大音声が熟睡している午前中に聞こえると、「殺意を感じる」と述べていた学習塾の講師もいた。
祭りの準備の音や幼稚園児の遊び声のように、昔なら何でもなかった音に対して苦情を出されるようになったのも、その時間帯に眠っている人たちが増加したからかもしれない。
このように人々のライフサイクルが多様化しているにも関わらず、東京都は飲食店の夜間営業の自粛要請を続けている(解除される見込みとのことだが)。
「昼は働き、夜は寝る」という昔のライフスタイルがほとんどの都民に当てはまると思っているとしたら、驚くべき事実誤認と想像力の欠如だ。
もし、「夕食は家で家族で食べるべきだ」と考えているのなら、独居世帯が増加しているという厳然たる事実を完全に無視している。
昔のライフスタイルを都民に押しつけ、飲食店等の経営を圧迫する愚策の結果、多くの失業者が出ている。
伝聞なので真偽のほどはわからないが、東京都の職員が池袋の夜の街で「都庁内にもたくさんの感染者が出ているぜ。両方のタワーに感染者がいる」と吹聴していたそうだ。
真偽のほどはともあれ、夜の街を重点的に検査する前に、都の職員全員のPCR検査をすべきだ。
何事も「隗より始めよ」だ。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2020年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。