中国抗議の気運高まる?人権問題考える国際会議と議連総会が同日開催

牧野 佐千子

中国の建国記念日にあたる祝日・国慶節の10月1日、香港、南モンゴル、ウイグル、チベットなど、中国政府からの人権弾圧が問題となってい各民族・地域の代表者や国会議員らが集まり「中国の人権問題を考える国際会議 Resist China 日本」が、衆議院第1議員会館で開かれた。

また、同日、衆議院第2議員会館で開かれたのは、「対中政策に関する国会議員連盟(JPAC)総会」。どちらも中国政府の人権問題に抗議するもの。中国政府の人権や自由への弾圧に、世界中で抗議の声が高まっているが、日本はどのような対応ができるだろうか。

各民族が苦境を訴えたResist China

午前中に行われたResist China日本には、在日チベット人コミュニティ、日本ウイグル協会、香港建国連盟など10団体が参加。アメリカ・ニューヨークに本部がある世界最大のチベット支援団体SFTが、世界36か国、88会場で行われた、中国の人権問題を一斉に訴えたグローバルアクションの一環だ。

この国際会議に参加した国会議員は、原田義昭元環境相はじめ、中谷元氏、山田宏氏、長尾たかし氏、松沢成文氏、柳ヶ瀬裕文氏、石井苗子氏、音喜多駿氏など自民党と日本維新の会が中心の顔ぶれだった。

議員がひとりひとり挨拶する中、松沢成文議員は

「中国共産党の力は日本国内もむしばんでいる。学識を持った人が日本の教科書をチェックしていくが、報道によると、教科書調査官の中に毛沢東主義の研究者が入っているというものもあった。日本国内にスパイ防止法がない中、中国共産党の利益を最大化させるためのスパイのような方が潜入して、教科書が蝕まれている問題も指摘したい」

と危機感を募らせ、今後、この問題を国会で追及していくと語った。

チベットでも始まった強制収容所

続く各民族からの訴えでは、まずは、チベットSFT日本支部代表のツェリン・ドルジェさんが、チベットの状況について、在外チベット人であっても、チベットの中に入るのが難しいと、外部から遮断されつつある厳しい状況を説明。内部に入れたとしても専門のガイドをつけなければならず、500メートルごとに当局の見張りがついている状況だという。

また、今年頭からウイグルのような強制収容所も始まり、チベット人だけでも強制収容された人が50万人いると言われているという。2008年ごろには、厳しい状況に耐えられずインドやブータンなどに亡命するチベット人も年間2000~5000人ほどいたが、国境の警備が厳しくなり、2019年には18人しか亡命ができなかった、

ウイグルの強制収容所問題はこちらの記事を参照いただきたい。

「民族浄化」を黙認しないために。ウイグル問題で日本ができること

また、南モンゴルの世界最大級の組織「南モンゴル クリルタイ」幹事長のオルホノド・ダイチンさんは、南モンゴルで「モンゴル人の言語文化を抹殺する」ために始まった中国語教育について訴えた。

内モンゴル自治区には、モンゴル人460万人が住んでいるが、2020年9月1日から、小中学校で、それまでモンゴル語だった国語が中国語になった。また、歴史上の人物についても「チンギスハーン」の記述が消され、毛沢東が1つ目の項目として登場することになった。

こうした政策に対して、ボイコットや抗議運動をする学生は学籍を除名し、モンゴル語教育の継続を望む保護者の署名運動に対しては買収工作がされるなど、現地の混乱や圧力で自殺するモンゴル人も増えているという。

ほかにも、韓国統一日報のホン・ヒョン氏が、中国政府によって介入されたと見られる韓国の不正選挙を訴え、カンボジア救国活動の会代表のハイ・ワンナー氏が親中派で中国からの多額の支援金で独裁体制を敷くフンセン政権の現状について語るなど、中国政府によって苦境に追いやられた人々の報告が続いた。

立憲民主党、国民民主党議員も参加のJPAC議連総会

その後場所を変えて開かれたJPAC議連総会にも、山田氏、中谷氏ら自民党議員は集結。こちらでは、山尾志桜里氏、岸本周平氏など、国民民主党、立憲民主党の国会議員が目立った。

香港の民主活動家からの報告や、多摩大学大学院客員教授の井形彬氏による「対中経済安全保障政策について」の解説が行われた。また、地方の市議会議員らによる「香港から市民参加の政治を考える自治体議員連盟」の設立についても確認し、山尾議員は「日本は地方議員の組織も設立されるなど、これに対する議員の活動は世界をリードしている」と語った。

中国政府の人権弾圧に対して日本が「世界をリードする」ためには、国会議員は、立場の相違を超えて連帯し、アメリカですでに成立している「ウイグル人権法」などの立法をぜひ成し遂げてほしい。同じ日に、ほぼ同じ目的で行われた2つの集会に参加して、2つの集会の雰囲気の差異に、果たして日本の国会議員は「連帯」できるのだろうかと、悶々とした気分のまま中国の国慶節は終わった。