トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染した結果、過去に大統領が権限を委譲したケースが取り沙汰されています。
トランプ氏は入院中も執務を継続中で、筆者も早期の回復を祈念しておりますが、合衆国憲法の内容を踏まえ、おさらいしてみました。
大統領が権限移譲を行う
・米国憲法修正25条第3節に基づき、大統領は副大統領に一時的に権限を委譲することが可能。その後、書簡にて職務可能宣言に署名し、復帰できる。
・大統領が実際に権限委譲した例は3回でレーガン政権で1回、ブッシュ政権で2回発生した。
チャート:過去に大統領が権限を委譲した例
大統領が権限移譲を行わないまま職務遂行不能に陥った場合
・副大統領と閣僚の過半数、または“議会が法令で定めたその他の機関”に対し、憲法修正第25条4節を根拠として職務を遂行できないことを通知。これに従い、副大統領が職務を代行。大統領が職務遂行が可能になった場合は、議会に通知した後、職務を再開できる。
画像:レーガン暗殺未遂事件発生時に作成された書簡、当時はブッシュ副大統領は署名せず実際に発効せず
・副大統領と過半数の閣僚、”その他の機関”が大統領が職務を再開できないと宣言した場合、議会が48時間以内に召集され、21日以内に決定を下す。上下院がそれぞれ約3分の2で大統領の職務遂行不可能との賛成票を投じれば、次回の大統領選まで副大統領が代行を務める。仮に副大統領も病気などで職務遂行不可能と判断された場合、継承順位は副大統領→下院議長→上院議長代行となる。なお、過去にこうした事例はない。また“その他機関”についても、医師団なのか法学者なのか特に定義されていない。
さて大統領の権限移譲の流れが分かったところで、大統領選のもう一つの注目、最高裁判事の指名動向について近況は以下の通りです。
共和党上院議員でもユタ州のマイク・リー議員を含め3人の感染が確認(10月3日時点)されており、マコーネル上院院内総務は上院での審議中断の方針に言及しました。しかし、10月12日に予定していたエイミー・コニー・バレット氏の指名公聴会を開催すると発言。上院ではコロナ禍を受け5月以降、リモートでの公聴会参加が可能となっているためです。
上院の会期は10月19日までのところ、上院はリモートや代理投票の制度改正を承認しておらず、マコーネル氏は3人の上院議員が採決までの回復を見込んでいることでしょう。
仮にその通りとなれば、共和党は53議席を有し反対派の2名を除き51票の賛成をもってバレット氏の指名を承認する見通し。最高裁で保守派が5名と過半数を占めることになり、仮に再集計など最高裁判断が必要となった場合は保守派の見解が通り、状況次第ではトランプ氏に有利な判断が下されそうです。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2020年10月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。