大阪都構想の論点「スケールメリット」

 

大阪維新の会都構想特設サイトより

住民投票実施日である11/1まで、残り1ヶ月を切りました。
様々説明をしてきている中ではありますが、せっかく記事を書くのであれば、現時点であまり世の中に出ていない論点で論じてみるのも面白いかなと思い、書き綴っていきます。

大阪都構想とは、275万人都市である「大阪市」を4つの特別区に再編する構想です。

今回は、大阪都構想の理解を深めていく中で、たどりつくであろう「スケールメリット」について考えていきます。

スケールメリットとは

例えば、ビールを買うとします。
1本だけで買うよりも、ケースで買ったほうが1本あたりの単価が安くなる。
こういうことは、日常生活を送る中でもよくあります。

つまり、1人で買うより、複数人数で買って、それを分けようぜ!そのほうが得やん?
というようなことであり、それは一般論としては正しいと言えます。

自治体で考えるスケールメリット

今年度はコロナの関係もあって、小中学生1人に対して1台のノートPCを配布する「GIGAスクール構想」という国の施策が前倒しで実施されています。

写真AC:編集部

そこでも先ほどのビールと同じような考え方で、小さな自治体に対し、「単独で調達するよりも、同一都道府県の近隣自治体と共同調達したほうがコスト的にスケールメリット出るから検討したほうがいいよ」というようなアドバイスが国のほうからも出されています。

こうした例からもわかるように、自治体としてスケールメリットを出しながらコストをおさえていくという考え方は割とスタンダードなのだと言えるでしょう。

え?じゃあ大阪市も特別区に再編すべきじゃないのでは?

このように考えた方がいらっしゃるかもしれません。
しかし現実的に大阪市でどういったことが起きたかというと、小中学生1人に対して1台のノートPCは4つのブロックに分けて調達を行いました。

理由は、大阪市の規模が大きすぎて、分割調達しないと入札不調のリスクが高いし、そもそも参加業者が限られすぎて不正入札の温床になる。
というものであり、社会事情とのバランスを取った結果でした。

大阪市というスケールメリットは絶対的なものなのか?

例えば、規模が大きいことがとにかく正しいという考え方なのであれば、全国の市町村全部合併しちゃえばいいよねという話になってしまいます。
そんなのは暴論だと、誰もがわかると思います。

ですから、最適な規模はどこか?というのを考えていきます。

大阪市が大きすぎる弊害

最近、大阪市が大きすぎることによる弊害に遭遇しました。

先程の小中学生1人に対して1台のノートPCを配布するという調達。4つのブロックに分けて実施したとお伝えしました。

結果どうなったか。
あるブロックにはGoogle Chrome OS、あるブロックにはMicrosoft Windows OSというような形で、バラバラのOSが調達されることになったのです。

この結果に対して、「同一OSになるように誘導すべきだった」と言う人もTwitterで出現したのですが、そんなの、入札の公平性を思いっきり歪めることになりますので、不正入札の温床になりかねません。ありえないのです。

ですから、この結果はある意味必然だったとも言えます。

結果、もしも仮に現時点で4つの特別区だったのであれば、4つの教育委員会が自分の所管範囲に責任を持ってそれぞれのOSに適したシステムで一元管理をしていけばよかったわけですが、現在は大阪市であり、教育委員会は1つしかないわけです。

当然、バラバラのOSであろうが、無理やりでも新しいシステムを構築して一元管理をしていく必要があります。そして今、この作業に非常に多大なる労力・コストを要しています。

つまり、端末に関しては4つのブロックで調達したので大阪市というスケールメリットが活かせなかったのに対し、一元管理するためのシステム構築には想定以上の多大なる労力・コストが発生してしまったのです。

これは、大阪市の規模が大きすぎることによって引き起こされた弊害です。

比較対象がないのも問題

大阪市は275万人。
例えば大阪市に近い人口規模の自治体は、上は横浜市で375万人。下は名古屋市で233万人。
横浜市とは100万人違うし、名古屋市とは42万人違います。
いや、42万人って、立派なひとつの自治体規模です。

きちんとした比較対象が存在しないことが、どういうことを引き起こすか。
例えばシステム開発など、要するにIT系の施策。
役所の職員で、そういうのに詳しい人は本当に少ないわけです。

だから、ベンダーの営業に頼りっきりになる。
提案されたことを鵜呑みにしてしまう。
こんな大きな規模で失敗できないし、そんなリスク負えないという気持ちが高まり、いらないものも受け入れてしまう。
そして、そんな存在は格好の餌食になる。

僕はこれまで、特に大阪市の教育委員会を見てきて、それを痛感しています。
一体、どれだけの税金を無駄にしてきているのだろうかと。
きちんと比較できる対象と切磋琢磨できる環境があるだけで、どれだけ違ったのだろうかと。

cfred/写真AC

大阪都構想で、比較対象が一気に増える!!

4つの特別区の人口は、約60万人〜約78万人の規模です。
このぐらいの規模の自治体は全国にどれだけあるのか。
±5万人ぐらいの規模(55万人〜83万人)で見てみると…

上は大阪府堺市の82万人から下は東京都八王子市の57万人まで、17自治体存在します。
その中には、東京の特別区も6つ含まれています。

今の大阪市の規模だと、なかなか見えにくかったどんぶり勘定的な税金の無駄使いも、比較対象が増えることで見つけやすくなる。

どこかの議員がなにかを見つけて指摘し、改善されたら、同様に人口規模が近い自治体も改善に向かっていくことになります。

議員という行政監視役のスケールメリットが新たに生み出されるとも言えます。
つまり、特別区になった場合、各特別区議会議員に対しても、全国の比較対象自治体議会議員との切磋琢磨が求められるということです。

そのような世の中のほうが健全であるとともに、各自治体の住民の皆様にとってもメリットにつながるはずです。

適正規模かつ、役割分担することが重要

4つの特別区がそれぞれ適正規模で切磋琢磨することも、大阪都構想で特別区を設置する意義のひとつです。

もちろん、モノによっては大阪市ぐらいの規模でやったほうが良いこともあります。
ですから、そういったものは「一部事務組合」という形でスケールメリットを享受できるように設計しています。

更に、都道府県レベルでやるべき仕事(広域行政)については大阪府に移管する。
つまり、大阪都構想とは、様々な仕事を最適な規模で遂行できるように整理する制度なのです。

漫画でわかる大阪都構想

今、大阪維新の会の都構想特設サイトで、「漫画でわかる大阪都構想」というコンテンツを公開しています。
なにを隠そう、このコンテンツの管理者は僕です。笑

10/7に第三弾の更新を控えており、その更新が最終更新となります。
全部で約200Pということで、漫画の単行本1冊ぐらいのボリュームになりました。
なるべく、大阪都構想についてわかりやすく伝えるために頑張って作っていますので、是非お時間ある時にご覧ください。

漫画でわかる大阪都構想

引き続き、皆様からのご理解を得られるよう、説明を尽くしていきます。