凋落するグルメサイト(下)飲食店再構築プラン

関谷 信之

「凋落するグルメサイト(上):飲食店の不満と負担」はこちら

グルメサイトの機能

グルメサイトから離脱した飲食店は、今後、どのように販路開拓すべきでしょうか。

利用客は、グルメサイトからインスタグラム・グーグルマップにシフトしている、と先に述べました。

これら「無料」のサービスが、グルメサイトと同等の機能を備えている。つまり「品質面」で劣らないのであれば、活用することが対策となります。

そこで、グルメサイトの機能を詳しく見ていきましょう。

グルメサイトの機能は、主に3つに分解できます。1つ目は、店舗の情報や魅力の発信などを行う、プロモーション機能。2つ目は、口コミ投稿・応答などの、コミュニケーション機能。3つ目は、予約(手続き)機能です。

それぞれ検証します。

1. プロモーション機能

プロモーションや広告は、到達範囲(=人数)と、心理効果(=印象の強さ)で考えます。

まず、プロモーションの到達範囲はどうでしょう。利用者が、グルメサイトからインスタグラムやグーグルマップにシフトしつつある現状を考えると、プロモーションは十分な人数に到達しそうです。

心理効果はどうでしょうか。以下の記事によると、インスタグラムが利用客に与えるインパクトは、グルメサイトをはるかに凌駕しています。

「注文はお決まりですか」と尋ねると、女性客はおもむろにスマートフォンを触りだす。「これが食べたいです」とかざされたスマホをのぞくと、インスタグラムに同店のケーキの写真が投稿されていた。(中略)マーケティングの担当者は、「食べログの写真をかざして注文するお客さんはいない。SNSとグルメサイトでは、パンチ力が全く違う」と話す。
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インスタグラムでは、衝動買いならぬ「衝動食い」がおこりやすい、と上述しました。

衝動買いのように、意図せず商品を買ってしまう行動を「非計画購買」といいます。非計画購買が、買い物に占める割合は、実に「9割」(※)。この非計画購買を促すため、スーパーなど小売店は商品陳列に工夫を凝らすわけです。

「衝動食い」を誘発させるには、インスタグラムが、圧倒的に有利です。インスタグラムは「写真」「映像」が主体のSNSです。視覚に訴えることができる。食欲を刺激できる。飲食店との相性が抜群なのです。

RitaE/Pixabay

印象の強さは、インスタグラムで十分。また、所在地や営業時間などテキスト情報は、グーグルマップで補うことができる。ただし、コース料理やメニューなど詳細情報は、やや不足する。

これらを考慮すると、プロモーション面においては、優れているが、詳細情報を補足する必要がある、と言えます。

2. コミュニケーション機能(口コミ)

グルメサイトの収入源は飲食店。その飲食店を批判する口コミをそのまま掲載できるのか。そういった疑問を持つ人が多く、過去に数回炎上したこともあります(※)。信用度が低下している点は否めません。

相対的に、グーグルマップの方が信用度が高い、と言えます。また、グーグルマップは、口コミ機能を強化させているため、投稿件数の増加が期待できます。

コミュニケーション面では、グーグルマップで問題ない、と考えて良いでしょう。

3. 予約(手続き)機能

インスタグラムには、単独の予約機能はありません。他社との連携で、予約機能を実現しています。ただし、連携先が「ぐるなび」や「食べログ」など、予約手数料が発生するグルメサイトでは意味がありません。ここは、自社で対応する必要があります。

予約面では、グルメサイトに比べ、不利と言えます。

インスタグラム・グーグルマップによる代替

3つの切り口で検討しました。まとめると

1.プロモーション   ◎
2.コミュニケーション 〇
3.予約(手続き)機能 ×

となります。

予約機能を自社で構築できれば、代替策となりそうです。

よって、対策は、

  • インスタグラムで「非計画購買」(衝動食い)を促進する
  • グーグルマップで、情報提供と口コミ等コミュニケーションを行う
  • 予約機能の自社構築を行う

となります。

次に具体的な対策を考察します。

インスタグラム・グーグルマップの活用

インスタグラムでは「非計画購買」(衝動食い)を促進させます。

そのためには、多くの料理写真を掲載する。影響力のある人(インフルエンサー)を積極的にフォローし、自店のアカウントに誘導する、などの対策を行います。また、「ビジネスアカウント」へ切り替えると良いでしょう。店舗への電話・メールなど連絡が簡単になる、詳細な情報が掲載できる、といったメリットがあります。

グーグルマップでは、情報提供と口コミ対策を行います。

そのためには「グーグルマイビジネス」を利用すると良いでしょう。検索時の表示内容がより詳細になる、口コミ投稿・返信ができる、などのメリットがあります。

無料で使える機能は、極力活用しましょう。

予約システム・自社サイトの構築

予約システムは、単体で独立したサービスを導入すべきです。グルメサイトより安価なものが多く、予約手数料も発生しません。無料プランが用意されているものもあるので、試してみると良いでしょう。

情報発信は、自社ウェブサイトで行う必要があります。まだウェブサイトを持っていない飲食店は、この機会に構築しましょう。上記の予約ページ設置にも必須となります。デザインに凝る必要はありません。シンプルな情報紹介と、予約システムへのリンクだけでも良いです。独自ドメインとサーバーレンタル・予約システムを導入しても、グルメサイトより安価に運用できるはずです。

自社ウェブサイトを、インスタグラムやグーグルマップへ掲載することで、相乗効果が期待できます。

段階的に依存度を減らす

既に、大手飲食店ではグルメサイトへの掲載を減らす動きが出ています。一方、小規模飲食店は、自社サイトが無く、プロモーションから予約管理まで、グルメサイトに依存している店が少なくありません。

インスタグラム・グーグルマップのフル活用と、自社サイトの構築で、ぜひ新規顧客の獲得・固定客化を行い、グルメサイトへの、依存を減らしていただきたいと思います。

[参考 補足]

※非計画購買
一般的に9割と言われている。5~9割、70%程度等複数データあり。
消費者と非計画購買 – 神戸大学経済経営研究所

※ 食べログ炎上
「食べログはなぜ何年も炎上し続けるのか?」(ITmedia ビジネスオンライン)