薬剤師は辛いよ。コロナでもう続けていられないと思う4つの理由 --- 塚本 智子

寄稿

東京都の発表によると、新型コロナ患者は3日連続(10月8日から10月10日)200人を超えました。テレビでも速報値が流れ、今後も患者数の推移を見守る必要があります。

写真AC

さて、医療従事者は2月からの一連の流れをどのように捉えているのでしょうか。今回、新型コロナウイルスの患者を受け入れ可能な中核病院の近くに勤めてらっしゃる薬剤師の女性(40代)に当時の様子を振り返ってもらいました。この女性は現在、調剤薬局の店長として手腕をふるっています。

今回の取材から、薬剤師がコロナ騒動の現場で直面した苦闘が浮き彫りになってきました。

1.  もはやボランティアか?300円で薬を届けよ

4月30日、東京都薬剤師会から”薬局における薬剤交付支援事業の実施”という名目で、「1件あたり300円の補助金で薬剤師自ら患者の自宅へ薬を届けよ」という通達が出ました。これについて女性は「配達は無理でしたね。感染リスクがあるんですよ。だから患者さんの費用負担で運送会社を使い配達希望の人に送ることにしました」といいます。

この時は緊急事態宣言が出されていた時です。しかも、東京の患者数は右肩上がりで増え、”移動するのは危険”と叫ばれていましたね。これは無茶な御触れと言わざるをえないでしょう。

2. コロナ慰労金がもらえない。危険手当は1日1000円

薬剤師は中核病院の院内薬局などを除くと、本来ならば医療従事者に支払われるはずの”コロナ慰労金”を貰うことが出来ません。理由は対面業務ではないとされているからです。「特に調剤薬局には慰労金は全く出ないです。ただ、コロナ疑いの患者は来るんですよ」と話す。

事実、緊急事態宣言のわずか前、処方箋に新型コロナに罹患している可能性がある患者には“コロナ ”疑いのチェックが記載された。女性は「処方箋があったら受け入れますけど、何で外を歩いているの?と思いました」という。

これには筆者も驚愕。コロナ疑いの患者は外を歩いていて、健康な人間がステイホーム。どうにも矛盾を感じざるを得ませんでした。

驚くのはそれだけではない。「患者がPCR検査を受け、新型コロナウイルス陽性と判断された場合のみ、担当の薬剤師に危険手当が支給されます。しかし、その額は経営者判断で1000円でした」という。

この金額に「それだけしか貰えないのか」と驚く読者も多いでしょう。しかも危険手当が出るだけマシで、出ないところの方が圧倒的に多いかったようです。これでは薬剤師からの不満が出るのは当然でしょう。

3. 卸しから薬が届きにくい

薬の配送についても伺いました。「薬の卸しを1日2回から1日1回に減らしました。ヒトが動くこと自体が、リスクと考えました」とのこと。

薬剤師が新型コロナウイルスに感染すると薬局を閉めなければならないので、この選択肢を取るしか無かったのでしょう。4月はまだこのウイルスが猛威をふるっていましたので、このような判断をするしか無かったのでしょう。

「また、卸しに対して急な配送を頼めなくなってしまったため、在庫を頻繁に確認し、買いたくも無い薬を多めに買わざるを得ませんでした」。

これはオンライン診療や電話診療で処方箋を持ち込んだ患者に対応するためだと思われます。頭の中では薬で精一杯、さらに1日3回の全体消毒があり、心身共に疲れが溜まる状態が続いたと言えます。

4. 経営悪化のリアル

収益ですが、5割減収になったという病院も珍しくありません。薬局も当然のように病院の経営の影響を受け女性は「収益は、2割減収になりました」と打ち明けます。

さらに「ただ、新型コロナウイルスが蔓延してから”コロナ鬱”で辞めた薬剤師もいます。透析の定期的な患者がいるので店を閉めるほどの業績悪化では無いです。しかし、間仕切りのアクリル板購入で20万円以上の歳出がありました。現在はほんの少し患者が増えたものの、新規患者は全く来ないですね」と苦難続きだったといいます。

病院でコロナに感染したくないと思っている人が大多数を占めているため、持病で定期的な診察が必要な患者以外は病院を敬遠するでしょう。最近では風邪なら自分で治す人の方が多いですから、コロナ前の状態に戻るのは難しいかもしれません。

災い転じて福に…

緊急事態宣言から4か月以上が経ち、都内の人出も平時に戻りつつあるようにみえますが、最後にいま特に集中して行なっていることについても伺いました。「少し時間ができたので、無駄な作業の徹底的な見直しを行っています。2019年に薬事法が変更され、事務員による薬のセッティングが可能となったので徹底的に教え込みました」といいます。まさに災い転じて福となすというのはこのことではないでしょうか。

今後しばらくは普通の風邪、くらいでは病院には行かない人も多いでしょう。風邪は寝ていれば治りますし、今までは薬に頼り過ぎていた、という論評も出て来ました。人員の少ないスマートな体制へ、今後薬局の在り方も変わって行かざるを得ないはず。今回取材した女性店長もそれを見越して動いているのかもしれません。

塚本 智子  リサーチャー/科学・翻訳ライター