コロナ禍で見えた若い女性のつらさ

写真AC:編集部

コロナ禍で困難を抱える色々な方々の状況が明らかになってきています。

今日は、10代20代の生きづらさを抱える女の子たちの状況のお話をしようと思います。

座間市で起こったショッキングな殺人事件の公判が9月末から開かれていますが、これは2017年に起こった自殺願望を持った若い女性などにSNSで声をかけ次々と殺害した事件です。

こうした事件や、若者の自殺者が減らない状況を踏まえて、政府は自殺相談のSNS事業を始めました。

実際の相談は民間団体が請け負っていますが、対象者ごとに団体の特色があって、10代20代の若い女性の相談に乗っているbond ProjectというNPO法人があります。

bond Projectは、SNSで相談を寄せてくれる若い女性たちにコロナ禍で抱えていたつらさや、必要な支援についてアンケート調査を実施しました。

その結果がまとまり、団体のHPに公表されました。

このアンケート調査の分析は、僕がお手伝いしたのですが、コロナになって、普段から苦しい立場の人、弱い立場の人が、ますます深刻な状態になっていることがよく分かります。

特に、
■ 「消えたい、死にたいと思った」人は、69%
は衝撃的でした。

その他、こんなことが明らかになりました。
■ 体・心のことについて困った人は、96%
■ 「自分を傷つけることが増えた」人は、36%
■ 学校のことで困った人は、87%
■ お金や暮らしに困った人は、61%
■ 望まない妊娠をした、したかもしれない不安があった人は、9%
詳しくは、bond ProjectのHPに掲載されている報告書をご覧いただければ幸いです。

お時間のない方は、こちらのサマリーだけでもご覧ください。
本人や家族の困難が増加している一方、居場所がなくなり、支援も減少したという苦しい状況が分かります。

僕は、厚労省時代に、自分が最終的に救いたいと思っている「困っている人」のことがよく分からない、自分の「霞が関で法律案や予算案を作る」という仕事が現場にどう届いているのか分からないという悩みを抱えていた頃、プライベートで支援団体の訪問を繰り返している頃に、bond Projectと出会いました。

初めて、bond Projectを訪問したのは2012年頃だったと思いますが、家庭に問題を抱えていて家にいることができず、家出をしたり、男性の家で暮らしてDVに遭ったり、夜の街でだまされたり、行き場のないつらい女の子たちの存在を知りました。

当時は、こういう若い女性を専門に支援する政策や制度がなかったので、霞が関の僕のところには全然情報が届いていませんでした。

実態を知って、愕然としていつかこういう人たちを支援する政策を作らなくてはと思い、それ以来定期的に現場に行ったり、当事者の女の子たちと接したりし続けていましたが、徐々にこういう苦しい状況の若い女性のことが世の中に知られるようになり、厚労省でこうした若い女性のための政策づくりに携わることもできました。

厚労省を辞めてからも内閣府男女共同参画局の有識者会議の委員として、携わることもできました。

でも、まだまだ支援が行き届いていないことがこの調査でも明らかになりました。政策的にも、社会的にもこれから支えを増やしていきたいです。報告書にはそういう思いを込めました。

また、今もつらい状況の若い女性が相談を寄せたり、保護されたりしているので、ご関心を持った方は、こちらに支援を寄せていただければ幸いです。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年10月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。