量から質への転換における規制の役割

一方では、人類の叡智は無限であり、技術革新による新領域の創出により、新たな需要創造されていくが、他方では、科学技術的に成熟に達していく分野も多くなり、そういう成熟分野では、需要の創造ではなくて、需要の発見もしくは再定義が重要になる。つまり、視点をから質に転換することで、多様を極めた需要の質の差、その無数の差異が再発見されてくるのである。その小さな差異に定位した事業構想こそ、多くの分野で今後の課題となる。

規制も、その高度化によって新たな需要を生み出すものとして、全く別の役割を果たし得る例えば、金融である。金融においては、量的拡大が全く見込めなくなったなかで、個々の金融機関が従来と同様の量的拡大を目指した競争を展開しても、その努力に要する費用に見合う収益をあげることができず、顧客の真の需要に応えられないどころか、むしろ顧客の利益に反した行為すら誘発してしまっている状況があ

これに対して、金融規制のあり方は、金融機能の量的拡大の終焉を前提にして、徹底した顧客の視点での金融機能の質的高度化を促すように、根本的な転換遂げている。顧客の視点にたつとは、顧客の多様な需要に応えることにほかならない。金融の未来には、量的成長はなくとも、質的高度化による成長はあり得るのである

同様な規制改革は、教育、医療など、多くの分野で断行されていく。原子力規制も、例外ではない。電力においては、金融と同じく量的拡大見込。故に、電力の安定供給体制の保護を目的とした規制環境は崩壊し、電力業界は自由競争に曝されたのであ。そして、この困難な状況のなかで、原子力規制の厳格化が断行され

規制強化に伴う費用の増大は、電気料金に反映させ得ないのだから、原子力発電存亡の危機に直面しているが、継続するにしても、廃止するにしても、もはや、それ自体の電源としての意義は希薄となり、ただ単に、電源構成全体の質的転換を加速させる役割が重要になっているのである

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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