先週、全日本空輸(ANA)は冬のボーナスを支給しない方針を固め、労働組合に提案したという報道があってました「ついに」という気がしました。
先月ですけれども、全日空に勤めている私の大学時代の友人と会ったときに、「冬は出ないかもしんない」と言っていたからです。報道によれば全日空の冬のボーナスは給与の2ヶ月分ということで今年1年の一般社員の平均年収は、前年に比べて3割超の減収となるそうです。そうなると、住宅ローンや子供の学費など、そうした人生設計にも影響を与えることになりますよね。
先日、中小企業のコロナ倒産が増えているという話をこのブログでしましたが、大企業だからといって安定できるとは言えません。全日空ではボーナス以外にも、給与の減額や退職金を割り増す希望退職者の募集や保有する機材の売却や不採算路線の見直しなど大胆なリストラにも踏み切る方針です。当然ですがその背景にあるのは、航空需要が戻らないということですね。
例えば全日空の場合、緊急事態宣言解除後の全日空グループ国内線の前年同時期比の旅客数は6月が80.2%減、7月が73.2%減、8月が75.3%減となっています。直近の8月を聞くだけでも、大変だと思いますけれども、4月や5月は90%代のマイナスですからね。
さらに今、皆さんだって海外旅行に行こうとは思わないでしょう。各国の入国制限もあり、仕事で行く人もほとんどいません。国際線の前年同時期比の旅客数は7月も8月もずっと96%以上のマイナスで、96%のマイナスとなれば残りの4%しか売り上げがないということです。
こんな状況ですから給与の捻出も難しいですが、給与は払わなければなりません。ではどうやって支払っているのかと言えば、政府による雇用調整助成金と多額の借入金で給与を支払っています。収益は上がらないけれども給与を払い続けることは、ずっと続けられることではありません。
GoToキャンペーンがスタートして国内需要は少しずつ回復しています。これから先は、そもそもインフルエンザや普通の風邪が流行するシーズンです。そこに加えて新型コロナウィルスの再拡大も懸念されています。さらに、国際線の先行きは見通せません。
一応、日本では新型コロナウイルスの感染拡大はひと段落しているように思えますが、海外では違います。そしてもう一つ、企業業績の悪化やリモートワークの普及によって海外出張そのものが減ることや、海外旅行に行く意欲も簡単には戻ってもないでしょう。
国際航空運送協会(IATA)によれば、世界の航空需要が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受ける前の水準に戻るのは、2024年になるとの見通しを示しました。需要が戻るのがまだ4年も先の話ですが、この数字も現段階での予想であって、今後のコロナがどうなるのかや、人の行動様式によってさらに遅れる可能性もあります。そうは言っても航空会社が飛行機の数を減らすにも限界があるわけですし、飛ばずとも飛行機のリース代はかかります。
ちなみに全日空のコスト削減策には社員への通勤定期券の支給取りやめというのもあります、テレワークの普及によって出社時の実費精算にするということなんですが、これは同業者でやはり厳しい状況の日本航空もやっていることです。また、富士通やカルビーなど他の大手企業も同じ対応をとっています。そうなると当然、今度は鉄道会社も厳しくなり、鉄道会社にもこうした影響が出てくるでしょう。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年10月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。