住宅ローン、家より自分が傾かないように

10月5日の日本経済新聞朝刊の一面トップは、「住宅ローン完済年齢上昇、平均73歳」という記事でした。この記事によると、住宅金融支援機構のデータで、今年のローンの利用者の完済年齢、すなわち返済を終える年齢が73歳だということなんです。平成12年(2000年)にローンを組んだ人の完済年齢平均は68.3歳だったことから、20年間で平均年齢が5歳上がっているんです。

この記事には完済年齢の高齢化の要因が書いてあります。まず、晩婚化で住宅を買う時期が遅くなったということです。20年前には平均で37歳から38歳、今は40.4歳になってからローンを組んでいます。それから、超低金利時代に入ってから逆に住宅価格は上がってきたということもあります。さらに、頭金を減らして借入額を多くしたということによって平均の借入額が増えていったということです。これも20年前の平均借入額は1900万円だったけれども、今では3100万円の平均借入額になっており、大きく増えていることがわかります。

確かに65歳あるいは70歳まで働ける企業の雇用維持策もでき、働きたい人も増えており、実際に働く人も増えています。とはいえ、退職金は年々減少傾向にあります。また、60歳前後から働こうと思えば働けるけれども、給与は下がって働くということにもなるケースが圧倒的に多いわけですから、記事には60歳でローン残高1000万円を超えているというのは、老後破産予備軍という怖い表現も書かれています。

さて、コロナも住宅ローンに影響を及ぼしています。やはり住宅金融支援機構によれば、ローンが払えずに返済条件を見直すという件数が増えているんですね。ローンの返済条件の見直し、コロナの影響がまだ少なかった3月はわずか2件でしたけれども、その後は6月が1483件、7月が1205件、8月は987件とほぼ毎月1000件ペースです。

住宅金融支援機構では返済期間を最長で15年の延長が可能ですが、そうやって毎月の返済額を減らす相談などに応じているようですけれども、当然これもまた完済年齢の延長に繋ります。

実は私、家を持っていません。28歳で結婚した頃に「家は買わない」と決めていました。なぜかというと、今後人口は減っていくと考えました。さらに、子供が少ない中で子供同士も結婚していくわけですから、長男長女が結婚すれば当然家が余っていく。それでも新築は見渡す限り作っているよねと考えたんですね。ということは、今ある家(マンション)の家賃が下がるというか、家賃を払う方が値頃感が出てくるだろうと考えたんです。それに子供が巣立っていったら、夫婦2人でもっと小さい部屋借り換えると考えればいいとも思いました。

今言った私の思考論理は、衆議院議員時代に不動産業者に呼ばれて講演したときに話したら、業務妨害だと物凄く怒られました。しかし、それでも私は家を現在に至るまで買っていません。とはいえ、賃貸がいいのか、購入がいいのかの答えには正解がないようです。

不動産は資産なので、貯蓄的意味合いがある。もちろんその不動産も立地によってやはり違うので一概には言えないということです。ただ、借りるにせよ、家を買うにせよ、背伸びをしすぎるのは危険ですね、家が傾く前に、自分が傾かないようにしてください。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。