男のためのジェンダー論

先月、「男女共同参画とSDGs」と題したオンラインフォーラムで、パネルディスカッションの司会をさせていただきました。

1.ジェンダー関係の活動に声をかけられることが増えてきた

僕自身は、元々フェミニストとか女性支援の分野だけを専門にやってきたわけではないのですが、困っている人や理不尽な状況に置かれている人たちのことは、いつも気になるので、女性支援もとても気になる分野です。

男女共同参画基本計画という政府の5年計画を今年改定数のですが、それを議論する内閣府の有識者会議の委員をやらせていただいてから、特に女性支援関係のイベントなどにお声かけいただくことが増えたように思います。

2.いつも男は僕ひとり

例えば、このような勉強会で講演させていただく機会をいただいたり。
女性支援に一生懸命取り組んでいる木村やよいさんという衆議院議員と友人(僕の言葉だと仲間ですが)が主催する女性支援団体向けの勉強会です。

現場の声を政策につなげるために

この分野に取り組んでいる人は、国会議員にしても民間団体にしても女性が多いので、僕自身が男性で珍しいから下駄を履かせてもらっている部分もあるかもしれません。

内閣府の有識者会議も、木村やよいさんの勉強会も、先月のオンラインフォーラムの登壇者もみんな女性ばかりで、いつも男性は僕一人です。

男女共同参画、ジェンダー、女性支援の分野は、女性が女性のための話を一生懸命しているという構図にどうしてもなるのですが、そういう状況である限り、なかなか支持が得られにくくてメインストリームになりにくいという感じがします。

僕自身は、こういう分野の方々とご一緒することに何の違和感もないのですが、「なんで。いつも男は僕ひとりなんだろう」と感じていました。

3.女性の地位向上じゃなくてすべての人の自己決定

オンラインフォーラムでは、国際連合開発計画(UNDP)でジェンダーと女性のエンパワーメントに取り組んできたジェンダー・開発政策の専門家である大崎麻子さんから、SDGsと女性についてお話をいただきました。

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントはSDGsの17の目標の一つであり、メインの課題でもありますが、日本語だと女性活躍とか女性の地位向上と言われるけど、そうではなくて誰もが自己決定できるとか、もっと人権に根差した概念だとおっしゃっていました。

これは、僕の感覚にしっくりきました。
僕の感覚でいうと、自分の人生を自分でつかみとることが難しいような人たちのことが気になるので、その中に女性もいるという感じです。

4.なぜジェンダーは男に分かりにくい?

フォーラムでは、参加者の方からの質問に答えるセッションもあったのですが、女性支援団体の方からこんな質問がありました。

「女性の職業選択やM字カーブ(子育ての時期に女性の就業率が下がること)とか、賃金が低いとかそういうことを学生などに話すと、女子学生は関心を持つけど男子学生はあまり興味を持ってくれない。男の子にも興味を持ってもらうためにはどうしたらよいか。」

僕自身の「僕はなんで女性支援の分野の方とご一緒しても違和感がないけど、なんでいつも男が僕だけなんだろう」みたいな最近の疑問とも重なるご質問でした。

僕は、司会だったので質問に答えなくてもよかったのですが、男性の登壇者が僕だけだったのと、気になっている問題だったのでお答えしました。

5.男性社会の中にも同じ構造はある

僕なりに感じているのは、ジェンダーの問題の根っこは「男性社会の縦社会やマウンティングの構造」ではないかということです。

僕自身は男性ですが、男社会ってめんどくさいなと思うことが結構あるんです。
誰が上か下か、誰が能力があるかどうか、誰が偉いか、そういうことを気にしている人がとても多いように感じるのです。

例えば、幼少期はケンカが強くて勉強もすごくできたので、かなり強者の部類にいたように思いますし、あまりに勉強しなくて高校で留年した時はバカにされることもありましたし、でも部活を頑張っていてテレビに出たりもしていたので、そういう部分ではある種の敬意を持たれていた気がします。

官僚になったら、当時は僕の出身大学から官僚になる人があまり多くなかったので、急に「すげえ」みたいに思われることもあったし、役所に入ったら最初全然仕事ができなかったので、やっぱり下に見られた面があったような気がします。

だんだん仕事を覚えて色んなことができるようになって、役所の中でよいポジションに行くほどに周囲の僕に対する目線が変わってくるのも感じました。

僕自身は、ずっと変わっているつもりはないのですが、点数やポジションによって周りの僕に対する扱いがどんどん変わるんです。

このことに、ずっと気持ち悪さがありました。それは、「俺の何を見てるんだ、俺の職業やポストじゃなくて俺を見てくれよ」というような気持ちです。自分を見てくれている感じがしない。飲み会に行くと、誰が仕事ができるか、誰が偉くなりそうかという話も男の世界だと結構多いです。そういう話になると「つまんねえな」とよく思うのですが。

女性の同期や後輩たちと飲んでると、ほとんどそういう話は出ません。だいたい、誰がいい人か、誰が面白いか、そんな話が多くて僕は居心地がよかったのです。独身の頃は女性の同期とばかり飲んでいましたし、課外活動などでも女性の社会起業家の中に男が自分ひとりみたいなこともよくあるのですが、だいたい居心地がよいです。

もちろん、自分自身は女性ではないので、彼女たちが抱えているものと全く同じではないと思いますが、性別という属性によって見られ方や扱われ方が随分と違うという感覚は少しだけ想像がつく気がするんです。

属性やポジションじゃなくて、その人をありのままに見て感じて、人として接する、そんな社会になれば、男性も女性も、もっと言うと色んな人が生きやすくなり、自分の人生を歩きやすい世の中になっていくのではないかと感じています。

皆さんはどうお考えでしょうか。

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編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。