吉野家の「黒毛和牛すき鍋膳」から考える外食産業の生き残り策

内藤 忍

外食産業の苦境が続いています。大手牛丼チェーンの吉野家HDの2020年3月~8月期の最終損益は57億円の赤字と上場以来最大となりました。また吉野家の先月の既存店売上高は前年同月比9.2%減、来店客数は12.4%減と回復していません。

そんな中、吉野家が季節限定の新メニュ「黒毛和牛すき鍋膳」を出したと聞いて、食べに行ってきました(写真)。

黒鍋に和牛とお豆腐、野菜、きしめんがたっぷり入った、これからの季節にピッタリの商品です。

価格はセットだと998円(税別)とファストフード店としてはかなり強気です。しかし、食べて見るとその価値をしっかり感じることができました。柔らかく口溶けの良い和牛が甘辛いタレに絡んで何とも深い味わい。これが1000円以下というのは、極めてお得と思いました。

吉野家というと、イメージは牛丼です。豚丼やカレーなどの他のメニュもありますが、看板である牛肉のメニュを極めていくのが「強みに特化する」戦略の基本です。そして、客数が減っているなら、客単価を上げることを考えるのも理にかなっています。単なる値上げでは客離れが進みますが、価値のあるものを「価値>価格」て提供すれば、顧客から支持されるはずです。

証券会社のアナリストの評価は厳しく、これからの見通しも暗いと見ています。しかし、黒毛和牛すき鍋膳は、強みに特化した高付加価値商品として、これからの業績回復に寄与するのではないかと、一利用者として感じました。

柔らかい和牛は、白いご飯と一緒に食べると最高ですが、1,424kcalもあるようなので、ご飯抜きの単品で注文しました。それでも、かなりのボリューム感。季節限定ですので、無くならないうちにまた行ってみようと思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年10月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。