こんにちは。 個別指導塾テスティー塾長の繁田和貴です。
朝晩冷え込むことも多くなり、受験シーズンが近づいてきていることを肌で感じます。
6年生はサピックスオープン・四谷大塚合不合・日能研全国公開模試などの大きな模試が毎月実施されます。最難関校は、過去問に似せたそっくり模試(学校別サピックスオープンなど)も用意されています。それらの結果が返ってきているはずですね。
結果はいかがでしたか?
(お子さんが6年生でなければ、いつかのための予習と思って今回の記事を読んでくださいね)
多くの方は、あまり芳しくない結果だったことでしょう。それもそのはず。
「目標は高く持つ」のが一般的で、そもそも「今の成績で受かりそう」な学校を第一志望にすることは少ないのですから、「これで安心」という判定が返ってくることの方が稀なのです。
ですから、良くない結果が返ってくることを前提に、そこからどう対処するかが大切です。そこで、今回はその対処法についてお話しようと思います。
「目標達成のためには、ポジティブに考えることが大切」とはよく言われることですね。何ごともポジティブに考えれば、成功しやすくなるという考えです。書店にはこうしたポジティブ思考を謳う本があふれていますよね。
私も基本的にはポジティブ人間なので、ポジティブであること自体はいいことだと思っています。ネガティブな人よりはポジティブな人と一緒にいたい。そう思う人は多いでしょう。
しかし、上記したようなポジティブ思考のススメは、実はあまり意味がないという見方もあります。なぜなら、研究によって、一般的に人はそもそも楽観的な考えを持つ傾向があることが分かっているからです。
「仕事で成功する」「お金持ちになれる」「長生きできる」。そして、きっと「受験に合格できる」。特に根拠も無くそんな風に考えている人は多いものです。
一方で、「離婚する」「急に病気にかかる」「会社が倒産する」といった出来事が起こることはあまり想定しません。万が一への備えを常にしている人は、果たしてどれくらいいるでしょうか?そう考えると、人は楽観的なものなのだということがよくわかりますね。
では、多くの人がもともと物事を楽観的に考えているのに、目標達成をできる人が少ないのはどうしてでしょうか?
それは、「ポジティブに考えればうまくいく」には、大きな落とし穴があるからです。
モチベーションに関しての名著「やってのける」の中で、著者のハイディ・グラント・ハルバーソンは、一言でポジティブ思考と言ってもそこには2つのパターンがあることを指摘しています。
それは「結果」に対してのポジティブ思考と、「過程」に対してのポジティブ思考です。
例えば受験というものに対しての考え方は以下のようなパターンです。
① 僕はきっと受験に合格できる。目標としている偏差値まで成績を上げられるはずだ。
② 毎日4時間勉強することなんて簡単だ。テレビやゲームの誘惑にだって負けない。
前者は結果へのポジティブ、後者は過程に対してのポジティブです。
多くの楽観主義者はこの2つの違いを理解できていません。しかし、この2つを一緒にしてしまうことが大きな落とし穴になるのです。
一方は目標達成に対して有効ですが、もう一方は逆効果になってしまうからです。どちらが目標達成につながる良いポジティブだと思いますか?
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正解は…
① の「結果」に対してのポジティブが良いポジティブです。
前回の「やる気が出る志望校と出ない志望校」で、「期待価値理論」という話をしました。モチベーションは目標の「価値」と、それが達成できそうな「期待」の大きさのかけ算で決まるという考え方です。「価値」ある素晴らしい目標でも、「期待」が低く、「どうせ目標は達成できない」と考えていたらやる気は出ないのです。
「結果」に対してポジティブで、「きっと目標は達成できる」と考えるのは、モチベーションアップの観点からは有効です。
では、②の「行動」に対してのポジティブは何がいけないのでしょうか?
心理学者のガブリエル・エッティンゲンが、「成功できると信じる」と「簡単に成功できると信じる」の違いが大きな差をもたらすことを明らかにしました。
エッティンゲンは、痩せたいと望んでいる肥満の女性の被験者に、食事療法と運動を組み合わせた本格的な減量プログラムに取り組ませました。その結果、プログラム開始前に減量できると強く信じていた被験者は、失敗するかもしれないと考えていた被験者よりも平均で12キロも多く減量に成功していたそうです。結果に対してポジティブな希望を持つことの重要性が分かりますね。
加えて、エッティンゲンは、被験者に「減量の困難さ」についても事前に尋ねていました。そのとき、食べ物を我慢することを「とてもつらい」と考えていた人は、「簡単に我慢できる」と考えていた人よりも、平均で11キロも多く減量できていたそうです。他の実験でも、パターンは大体似たようなものだったそうで、「成功を確信する」と同時に、「成功のためには厳しい道のりを乗り越えなければいけない」と覚悟している人が、実際に成功をつかむものなのだそうです。
「過程」に対してポジティブなのは、要するに「なめてる」というだけのことで、失敗するパターンだということですね。これで、お子さんを合格に導くためにどうすれば良いかが見えてきたのではないでしょうか。
「合格できる」とポジティブに考えつつ、「そのための努力」については真剣に深刻に考えられるようにしていくことが必要ということですね。では、そのためには具体的には何をしたらよいのでしょうか?
おすすめなのは「長短比較」と言われるワークです。
① ノートか紙を用意し、そこに目標を書きます。(○○中学校合格!など)
② 目標達成したときのことを想像します。どんな気持ちでしょうか?周囲の人の反応は?どんな楽しいことがその先に待っているでしょうか?思いつく限り書いてください。
③ その結果を手に入れるために、乗り越えなければいけない困難を書き出します。毎日コツコツ計算の練習?嫌いなテストの解き直し?
②③を数回繰り返してください。
そうすると、目標達成へのポジティブなワクワク感を育てると同時に、その過程に対しての心がまえを育てることができます。もし②に比べて③があきらかに大きいようであれば、目標設定を見直す良いきっかけなのかもしれません。
このワークは親子でそれぞれ取り組んでみてください。親は親で、「この子を合格させるために乗り越えなければいけない自分自身の困難」をはっきり見つめることは大切なことですよ。
そして、ダメなポジティブ思考の落とし穴に引っかからず、前向きに受験勉強に取り組んで、目標達成に突き進みましょう。
残り約3か月、頑張りましょうね。