衆院東京1区、維新 小野氏の参戦で面白くなるか

日本維新の会は27日、次期衆院選東京1区の候補者として、都知事選で擁立した前熊本県副知事の小野泰輔氏を公認すると発表した。小野氏は永田町で記者会見し、「大阪がかつての停滞から10年かけて持ち直している、その事実を見ても(維新は)改革を着実に進めていける政党。そういう仲間と共に戦っていく」と抱負を語った。

花の東京1区、激闘史

東京1区は千代田区と、港区、新宿区の大部分。つまり、永田町・霞が関、東京都庁がエリア内にあるという、シンボリックな選挙区であり、政界の風向きを占う意味でも注目度が高い。

小選挙区スタート後の1996年から民主党政権が誕生する2009年までの5回の選挙では、自民党の与謝野馨氏(2017年死去)と、民主党の海江田万里氏が激しいつばぜり合いを演じた。2人は大臣経験者でもあるが、この間、1度ずつ比例復活も逃す完全落選を互いに経験している。

そして、民主党が下野した2012年選挙では、全国の小選挙区で最多の9人が乱立。これ以後は自民党の山田美樹氏と、現在は立憲民主党にいる海江田氏が接戦を演じており、過去3回の選挙では、山田氏2勝(比例復活1)、海江田氏1勝(同1、完全落選1)という情勢だ。前回は浪人中だった海江田氏が、立憲民主党のブームに乗って選挙区勝利で返り咲きを果たしている。

山田氏、海江田氏(衆議院サイトより)

今回、小野氏が割って入る形だが、都知事選では都内全体では4番手だったものの、千代田区と港区では2番手、新宿区では3番手と選挙民との相性の良さを見せた。小野氏自身も記者会見で「お二人の現職がいて当選するのは簡単ではない」としながら、「港区、千代田区の得票が多かったことは大きなアドバンテージだと思う」と自信も示した。

日本一の“ハイスペック選挙区”展望

まぽ (S-cait)/写真AC

1区のエリアは日本国内でも平均所得が際立って高く、港区は「10人に1人が社長」(東京商工リサーチ調査)と言われるだけあって、選挙民の経済・ビジネスへの感度も「日本一」だろう。都知事選のときの候補者の顔ぶれを振り返れば、現職の小池氏は突出していたとして、外資系コンサル出身で、その経験を生かし、熊本県副知事として「くまモン」ブームの立役者になった小野氏の経歴は評価されたとみられる。

そして1区で過去に議席を確保してきたのが与謝野氏、海江田氏。ともに言わずと知れた政界きっての経済論客だった。2012、14年に当選した山田氏は経済産業省出身で、外資2社を経て政界に転じた。

ちなみに2012年選挙で維新は直前まで日銀マンだった加藤義隆氏を擁立(落選)するなど、候補者の「経歴争い」としては、全国に289ある小選挙区で最も“ハイスペック”といえるかもしれない。

次期衆院選の展望だが、小野氏は都知事選で知名度が急上昇したとはいえ、実質2人いる現職の地盤がかなり厚いことは言うまでもない。また今週末の大阪の住民投票の結果いかんで維新に風が吹くかどうかもポイントだろう。

ただし、現職2人に隙が全くないかといえばそうでもない。

まず2人の現職はスキャンダル歴がある。山田氏は過去に秘書が交通事故を起こしてその時の対応が微妙だったことは政界、メディア関係者の間では周知の事実だ(当時の詳細は安積明子氏の記事に譲る)。海江田氏も経営破綻した和牛オーナー商法「安愚楽牧場」を経済評論家時代に推奨し、裁判沙汰になるトラブルがあった(判決は海江田氏勝訴)。

ちなみに公平を期しておくと、維新も今回小野氏を擁立できたのは前任の候補予定者が逮捕される不祥事があったからだが、「禍転じて」切り札に差し替えた格好だ。

うるさ型の選挙民を唸らせられるか

筆者は1区民だが、率直に行って毎回投票所に行くたびに、不甲斐ない2人の現職に頭を抱え、どちらに投票すべきか思い悩まされてきた。

スキャンダルのこともだが、山田氏は当選同期の若手たちと比べても目立った活躍ができていないし、海江田氏は民主党政権の大臣時代に国会審議中に号泣したことくらいしか覚えていない。この際告白しておくと、前回の選挙、投票所の記帳台の前に立つ段階になっても決めきれず、選挙区については人生で初めて白票を投じた。

個人的には、自民党が、アゴラでもおなじみの与謝野信氏を1区に擁立したほうがはるかに将来性があると思っていたくらいだが、山田氏から与謝野家への“大政奉還”は残念ながらありそうにない。

そんな筆者の個人的な心情はともかくとして、選択肢が増えたこと自体、歓迎する1区のハイスペック有権者は多いのではないか。候補者討論会などで「さすがは花の東京1区」と、うるさ型の選挙民を唸らせる高レベルの政策論争を期待したい。